続・いいものを1つ

茨木市立文化博物館で開催中の総持寺の宝物を紹介する展覧会を見学した。

文化博物館といったような施設は、どこの市や町にもあります。
たいてい、その地で掘り出された土器やら、農民たちが使っていた農具やらが展示されたりしている。
市が文化になけなしの予算をあてがってなんとか続けてはいるけれど、正直、よほどのファンでない限り足を運ぶことはありません。

実際に、このたび訪れた総持寺展もお客さんは2,3名程度でした。

でもね! ですがね!!

これがまたびっくりしてしまったのですよ。

二天立像の威風堂々としたその立派なこと!

総持寺の御本尊を模して造られた千手観音と厨子の美しさ!

海北友雪が描いたとされる総持寺縁起絵巻の楽しさ!

室町時代に描かれた「弁財天と十五童子像」の緻密さ!

確かに六本木の醍醐寺展とか、東博大報恩寺展とかもすごいけどさ。

この茨木の片隅の小さな博物館に、静かにたたずむこの厳選された美術品の数々にも圧倒されてしまうのです。
たくさんないからこそ、また輝いて見えてしまうのです。

たくさんはいらないのかもしれない。すばらしいものが1つあればいいのかもしれない。

この前、日本酒を呑んで感じたようなことを、今度は仏像を見て感じてしまったのでした。

いいもの、まだまだあるなあ、日本。一生見切れないや。□

 

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異国の居酒屋

天満で一杯いただいた。

路地裏を入った奥にあるひっそりと小さな居酒屋だった。

小さな店に入るときの不安のひとつに「客がいなかったら...」ということがあろう。
いくらおいしくても、初めて行く店で自分一人、大将と向かい合って、じっとりと呑む展開は、中々肝っ玉が冷える。

そんな不安を抱えながらエイヤと飛び込んでみたら、カウンターに2組、テーブル席に6名の客が既に宴会を始めていて、店の裏路地感や小ささなんて瞬時に吹き飛んでしまうほどの賑やかさだった。
これまでに磨かれてきたぼくの「居酒屋アンテナ」がこの店はいい。と、即座に判定をくだした。素晴らしい店だった。

小さい店ながらカウンターには多くの日本酒の銘柄が並ぶ。
ただ著名な銘柄を並べたのではなくて、ハーフサイズの注文もできるところなどに、店主のこだわりが感じられる。
料理もうまい。これはいい店を見つけたぞ♪

 

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うきうきしていたら、ふらりと外国人のカップルが入ってきて奥のカウンターに座った。30代くらいかな。店は満員である。

呑んでいる途中、ちらちらとその外国人たちの様子をうかがってしまった。

 

「日本人ですら入るのに勇気がいるようなこんなお店に、よくもまあ、飛び込んでくるものだなあ....。」


ぼくも、かつてニューヨークやイタリア、フランスを旅をすることがあった。
だけど、僕がそれらの国を訪れた時、現地でこんなローカル色の強いお店に、飛び込む勇気はなかった。
もちろん憧れはあります。折角の旅です。
そこらへんにあるチェーン店や観光地のど真ん中にある大手のレストラン等で、旅の食事を粗末に終わらせてしまうよりも、地元の人ですら知らない、行ったことも無い「通」な店に入れたらどんなにしあわせなことだろうと思うのです。
日本ならば、いつもかならず徹底した店探しをしますが、海外ではなかなかそんなおこだわりを叶えることはできません。ましてや一人ならなおさらです。
異国の地のお店に対する確かな情報を調べる必要があるし、お店の人と話すための語学力も必要でしょう。
僕が海外で食べたレストランは、異国の地にひとりでやってきたという解放感が美味しさを感じさせてはくれたものの、とびきりうまいというわけでもなかったのです。
今、この店に入ってきた外国人カップルを眺めた時、そんなことをつらつらと思い出してしまっていたのでした。

「よかったね!この店、大当たりだよ!!」と彼らに声をかけてあげたいくらいでした。

それにしても、メニューは日本語のみ。小さな字でぎっちりと料理や酒の名前で埋められている。
彼らはどうやって注文しているのだろう......?と思っていたら、男性の方が日本語で注文していました....。女性の方は日本語はわからなかったみたい。男性が女性を招待したようでした。
そうだとしても、やっぱり、なかなかこられない店ですよ。

僕も次回、海外に行ったら、今度こそはおこだわりのお店に飛び込んでみたいなァ。

今宵もまたまた楽しいお酒になりました。□

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香川の銘酒・悦凱陣。

 

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山川光男。ジャケットに衝撃。ゆるい。和田ラジヲか。

今日の一冊

 

「父からの手紙」小杉健治著 光文社文庫(9点)

 

二つの家族の物語が交互に描かれていく。

離婚以来、毎年手紙を送ってくる父はどこにいるのか。

兄はなぜ焼身自殺を図ったのか。

結婚を予定していた男は誰に殺されたのか。

平行線と思われたそれぞれの家族が抱える事件が、
やがて一つの接点で結ばれていく。

家族や死というテーマを深く描きながら、
ミステリーとしてもしっかり納得させる完成度の高さ。

まるでニューシネマパラダイスのような。

ホームランです。□

 

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今日の日本酒 ~番外編~

★SAPPORO那須工場発
 クラフトビール 空模様シリーズ

 

この夏に那須の旅先で手に入れたビールです。
那須の工場で作ったサッポロビール発のクラフトビール

那須という場所が御用邸からはじまって、日本国民にとっての大いなるブランドであることを、このクラフトビールを飲みながら改めて感じています。

「大阪の地震はどれくらい揺れたんですか」

そう問いかけてきた宿の主人に

「6弱ですが、何か?」と返したところ、

「こちらは6強だったんです」と返されて、ポカンとなりました。東日本大震災の余波は那須でもすごかったようだ。

「でも流石、那須御用邸を作るほどの場所です。ここらは震度6強でもほとんど被害を受けなかったんです」

単なる避暑地ではなくて、日本でも最も美しくもあり、さらに安全でもある場所だと知ったのでした。皇族が訪れる場所というのはそういう場所なのだと知りました。

そんな場所で作られたビールです。
だからといっちゃあなんだけど、美味いです。
日本のビールは全て美味いけどね。でもなんだか特別な美味さがあります。□

 

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いいものを1つ

ふたつの居酒屋に訪れました。

ひとつは、100種類もの銘酒がガッツリと揃えられたお店。

ひとつは、種類はそれほどでもないけれど、アッと驚く希少な銘柄を紹介する店。

両方とも、ほんとうに良いお店でした。
だけどね、ぼくは後者のお店がとても気に入ったのでした。
100種類をそろえるお店は確かに素晴らしい充実ぶりだったけれど、目移りばかりしてしまって正直なところ、何を呑んだか、どんな酒だったかをあまり思い出せないんです。
対し、種類が少ないお店の方は、銘柄は少なかったけれど、1つ1つのお酒にとてもインパクトがあった。さらに。

ジャケ買いなら徳島の三芳菊ですね!」

「ノンストップエロティックキャバレーって知ってますか?」

店員さんも、お酒への愛があふれていた。
料理に合わせるなら。ジャケットで買うなら。レアな銘柄なら。.....と、ぼくらの話のひとつひとつを拾ってくれて、自分のことばで、おいしい、まだ見ぬ、驚きのお酒を薦めてくれたのでした。
おかげでとても楽しいお酒の席になって、あとの余韻もとても気持ちが良かったのでした。


「いいものを1つ」でいいのではないかな。と思ったのです。


呑む時間も呑める量も限られているならば、たくさんよりも、いいものを1つ。絶対に忘れない1つ。でいいのかと感じたのです。
山手線を一周するほど多くのお店で呑んできたけれど、振り返ってみたら印象に残っているのはそういうお店が多いことに気付きました。

モノよりもコトの時代なのかもしれない。そんなことも体感したお酒になりました。□

 

魂の叫び

「なまけるなよ!!」

ほぼ日手帳を開いたら、すみっこに書いてあった言葉です。
この春の個展の追い込みには、本当に懲りたのです。
いつも直前になって、なんで時間があるときにきっちり準備しておかなかったのだ!!と頭をかかえるのです。
例年9月末に二紀展の出品が終わって、10月から12月にかけてはいわゆるオフのシーズンになるのだから、とくに10月~11月には、次の春の個展に向けてしっかりと種をまいて準備しておくべきなのです。
それなのに、いつもいつも個展の直前になって何の準備も進んでいない。そして転げまわっている。
まるで8月31日にまったく宿題をやっていなかったと頭をかかえる小学生のようです。
もう10年にもなろうとしているのに、学習能力がまったくない。
この「なまけるなよ!!」という言葉は、過去のぼくが、現在のぼくに向けて残してくれた「魂の叫び」なのです。
そろそろ本当に学びたい。否、学ばなくてはならない。
真摯に受け止め、こつこつと準備を進めていきます。□

ハロウィン論

ハロウィン。

年々規模が膨れ上がっていってますね。

今までは傍観しているだけでしたが、このたび、奇しくもハロウィンイブイブイブイブ?に渋谷で飲む機会があって、ちょっとだけハロウィン気分に触れることが出来ました。
たくさんの人がコスプレしていて、やっぱりお祭りは楽しいもんだなあ。と愉快な気持ちになっておりました。

でも、10/31の渋谷の様子をニュースで見ていると、楽しいばかりでもなさそうで。
3万人もの人々が街を埋めている様子は、イナゴの大群に襲われる農家のような様子にも見えてきたりして。
3万人って、大阪城ホール2杯分ですよ。それだけの人があの狭いエリアに集まっているんだからすごいことです。
お店をされている方々も事故がないよう、ガード体制を作っていたりして、なかなか大変そうです。

ハロウィンという、最近になって一気に知名度を上げてきたイベントには興味があります。
本来の子供達がモンスターに扮してお菓子をもらいに近所を練り歩くというイベントとはもはや全く姿を変えた日本独自のイベントになってきています。
後天的に日本に上陸したお祭りの日本への入り方、変貌の仕方は、日本の今という時代や、日本における文化の広がり方など、日本という国の特性を見極めていく材料にもなるのではないか。とも思うのです。どうして渋谷なのかということもね。

個人的にはお祭りは大好きなので、楽しく、迷惑をかけずに、クリーンにやったらいいなあと思っています。

来年はゾンビに!...ってもう何度言っているんだ。
やるなら4,5人くらいで徒党を組みたいな。で、恋ダンスするんだ(爆)。□