今日の一冊

探偵ガリレオ」 東野圭吾著 文藝春秋

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テレビドラマ、映画で人気のあるガリレオシリーズの1作目。
5編の短編集。
不可解な科学現象が絡む殺人事件を、天才物理学者・湯川と刑事・草薙コンビが解決する。
ミステリー要素に、謎の科学現象の解明を絡ませているところが新しい。

突然、頭から燃えだした男だとか、池に浮いていたアルミニウム製のデスマスクがどのようにしてできたか等、不可思議な現象が絡む殺人事件が次々と起こる。

但、解決編を読んでも、解明自体もちょっと不可思議・荒唐無稽で、腑に落ちないことが多いように感じました。そういうものなのか、と納得するしかないという感じです。
テレビドラマは、その腑に落ちない部分を上手に映像化したことで大人気となったのではないだろうか(観ていないので単なる憶測ですが....)。

今なお人気シリーズなので順番に読んでいきたい。長編が良いらしいですね。□

★街の灯

その日の居酒屋はとても静かだった。

カウンターだけの小さなお店だけど、料理や酒はとても美味しい。
割烹風の日本料理を出してくれるのだが、祇園で同じような料理を食べたらきっと数万円はかかるだろう。
そんなお店だから、地元では人気が高く、満席のことが多いのだが、その日は珍しく客は僕らだけだった。

軽く新年を祝いながら静かに料理と酒をいただいていたのだが、突然一人の男性が店に入ってきた。

客ではなかった。
日焼けした彫りの深い顔。インドか中東出身の男性と思われた。歳は30代くらいだろうか。
日本語が不得手のようで、小さな紙に日本語で何か説明が書かれた紙を店主に渡してきた。
そして彼は、かばんから何枚かの絵を取り出して、店主や僕らに見せ始めたのである。
どうやら絵を買ってほしい、ということのようだった。
A4くらいの紙に描かれた、ディズニーのアートのような色鮮やかな作品で、一部に金箔などが貼られていた。

「No, thank you!」
と、お断りすると、男性は残念そうにかばんに絵を戻し、肩を落として店を出て行った。
結果、追い返すようなことになってしまったけど、なんだか同じ絵描きとして心に染み入るものがあったのです。

昭和の映画によく登場する居酒屋では、客のテーブルにギター片手にナガシがやってきて曲を歌って小銭を稼ぐというシーンがあったように記憶している。
映画「モンパルナスの灯」では、ジェラール・フィリップ扮するモディリアーニが、居酒屋でデッサンを買ってくれと客のテーブルを回るシーンがあった。残念ながらデッサンは一枚も売れないわけですが....。

そんな切実な願いや想いのようなものを、彼からも感じてしまったのです。

「価値」というものは、本当に人に伝えるのが難しいものです。
情熱や想いや、危機感はある。けれど、人々にとっての「価値」にはなっていない。
ものづくりをする様々な経緯で、そういう無念さのようなものを僕もずっと持っていて、だから彼に共感する部分があったのでしょう。

彼は今日もどこかで絵を描き、また居酒屋を回っているのだろうか。

互いに人々の「価値」になる、いいものを生み出せていけたらいいなと、影ながら応援しています。


今日も読んでくれてありがとうございます。
さらには「マッチ売りの少女」までさかのぼる話ですね。「同情するなら金をくれ!」という流行語もありました。□

今日の日本酒

MIYASAKA美山錦 しぼりたて生 Challenge with No.7
(長野県諏訪市/宮坂醸造株式会社/10点)

MIYASAKA みやさか | 宮坂醸造株式会社

 

雑誌の紹介で見た前衛的なジャケットが頭に残っていました。

いつもすごくゆっくり呑むので生酒はあまり呑めないのですが、正月ということで、しぼりたてを選びました。これが大成功。

美味いです。

真冬の信州の晴れた夜空のような爽快感。とありますが、本当にそのとおりなのでした。

「真澄」のスピンオフという位置づけなのでしょうか。
古典を大切にしながら新しい挑戦に向かっていく、頼もしい日本酒の未来を感じました。□

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★十日戎

 

「商売繁盛、笹もって恋っ、否来いっ」

 

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初詣が終わるや否や、十日戎がやってきた。

いつもは静かな神社に太鼓の音と歌声が響き渡り、所狭しとにぎやかに屋台が並ぶ。
「商売繁盛祈願しとかなっ!」というのは単なる口実で、結局はお祭りが大好きな僕なのである。
参拝をすませてから、御神酒を片手に屋台を散策する。
何かを買うわけでもない。
賑やかなその雰囲気の中を、ただ歩いているだけでしあわせなのである。

 

射的の屋台に足が止まる。
3層になった回転台の上に並べられた景品をめがけてコルク弾を撃ち込み、景品が下に落ちたらもらえるという、昔ながらの屋台である。

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子供達が遊ぶ後ろにくっついて、ずっとその様子を眺めていたのだが(あやしいものではありません!)、本当に文字通り「昔ながら」なんだよね。
僕が小さい頃から、もうほとんど変わり映えしないんです。屋台の形態も景品も。
冷静に眺めたら、景品はどこにでもある駄菓子だったり、名もなき置物だったり、時代錯誤のおもちゃだったりするのです。

わなげの屋台も同様で、どういう用途かもわからない、去年というか、以前からずっと、全く同じ置物のようなものが並んでいます。

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だけど、それでも子供たちは夢中になって遊ぶのです。
闘志を燃やして景品をとることに夢中になっている。
そしてそれを僕は夢中になって眺めているのです(あやしいものではありません!)。

時代が進んでインターネットやデジタルの時代になって、子供たちにとって物心ついたときには、最先端のおもちゃが目の前にある時代だけれど、子供にとって楽しい、欲しい。と思うものの本質ってのは時代に関係なく、普遍なんだよなあ。
小さなおこづかいという制約の中で、最大限に遊ぶ、楽しむ方法を探す。それが射的とかわなげの楽しさのエッセンスなのではないか。

大人は変わり映えしない屋台をなつかしいと眺めて、子供はその屋台を「今」と受け止めて遊ぶ。変わる必要もない。変わってはいけないものがある。ということを強く感じました。

 

今日も読んでくれてありがとうございます。
射的も好きだけど、金魚すくいも大好きです。さすがに冬にはないけれど。□

夢十夜 Season3 第九夜

こんな夢を見た。

大学時代の漫画研究会の部室にいる。

少しずつ空が暗くなり始めている夕方。

部室には自分を含め、同期のシンイチローと名も知らない先輩との3人しか居ない。

部室に置かれた部員同士の連絡帳「まるが」に意味不明な落書きをした後、帰ろうとなり、3人で部室を出た。

3人で帰るつもりでいたが、同期のシンイチローが「用事があるから」と反対方向に去って行った。

結果、名も知らない先輩と自分の二人が残されたが、なんとなく気まずくなって「僕も用事があるので...」と先輩と別れて駅に向かった。

ギンレイホールから飯田橋の東口に回り込んだとき、歩道橋から同期のジョリーがこちらに向かって来たので、挨拶がてら声をかけたのだが、眉間に皺を寄せて目をそらされた。

そのとき、はたと気づいた。

「彼はまだ、僕のことを知らないのだ」

さっきのシンイチローの余所余所しさも、僕らが出会ってまだ間もなかったからだったのではないか。先輩の名がわからないことも。

自分は、大学に入学したばかりの頃に戻っていた。

また一から勉強し直せる。全部やり直せる。そう気づいた自分は、帰るのをやめてすぐに大学の図書館に戻っていった。□

 

振り返る。

昨年の「今」のほぼ日手帳を読み返しています。

ほんとうに面白いです。

ありありと昨年の今日がよみがえってきます。昨年の手帳を見返して、まるで昨日のことのように生き生きと去年を思い出せます。

これこそが、僕の最もやりたかったことです。

 

「誰かが頑張れば、みんなついてきます。

 「誰か」に誰がなるかです。」

 

こんなメモが去年の今日の手帳に書いてありました。

一年前の僕が一年後の僕に残した言葉です。

沁みます。

今日、僕が書いた言葉も、未来の僕を震わせる言葉であったらな、と思います。

 

今日も読んでいただいてありがとうございます。僕だけでなくて周りの人々も震わせる言葉を残したいなぁ。

深大寺

 

意外に小さいな。


それが第一印象だった。

東日本最古の白鳳仏、深大寺の国宝・釈迦如来倚像は僅か83cmほどの小柄なお姿で静かにたたずんでいた。

多くの如来は結跏趺坐や半跏思惟というお姿が多いが、両脚を前に出した、倚像(いぞう)という形態が珍しい。

飛鳥時代後期、白鳳時代。初めて作られ始めた日本独自の仏像の特徴のひとつである。

国宝仏のほぼ90%以上は京都・奈良に集中していて、東日本の国宝仏は3体ほどしかない。そんな珍しさや、小さなお姿だからこそのきめ細やかさや可愛さも感じられとても印象深い出会いとなった。

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国宝仏に会いたい。

それだけしか頭の中にはなかった深大寺参拝であったが、水木しげる先生が長く住んだ調布市でもあることから、ゲゲゲの鬼太郎のお店があったり、実は深大寺は蕎麦が有名で、深大寺蕎麦の店が軒を連ねていたりで、実に美味しく楽しい散策ともなった。

 

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今日も読んでいただいてありがとうございます。深大寺蕎麦といただく王禄も素晴らしかったよ。