活字依存症

「上です」

「違います。ではその横は?」

「右です」

「違います。ではその横は?」

「下です」

「違います。はっきり見えるのはどれですか」

例年さくさくっと終わる視力検査であるが、今年は難航した。
かつてこんな入り組んだ対話を検査医としたことはない。
雨模様の日は見えないことが多い。
さらに眼鏡も汚れていた。
.....そんな無理やりな言い訳をひねりだしても、これだけの不正解はここ近年無い。
視力が落ちているのかもしれない。
思い当たる原因はいろいろある。
大きな理由の一つとしては、電車の中での長時間の読書。ではないか...?
ここ最近の環境の変化で、ゆっくり本を読む時間を手に入れ、なかなかのご満悦であったのだが、思えば電車の中での読書は目になかなかの負担をかけているのかもしれない。
だけど、周りを見渡せば小さなスマホの画面を長時間電車の中で見つめる老若男女たちは、さらに、まるで横浜にたどり着くほどの長時間にわたってブルーライトを浴び続けているのである。ブルーライトヨコハマ

おっさんギャグは、ほどほどにして。

ちょっと気をつけないといけないかもしれないなぁ。活字依存症患者にはなかなかの試練だけれども......。□

スイカに塩

在宅勤務ってのがあります。

通勤時間がないから、すぐに仕事に入れるし、仕事が終わったらすぐに自宅の仕事に戻れるから、さぞかし「楽」になるのだろう、なんて思っていたんだけど。

「楽」になったというわけでもないみたいだ。
というか、むしろしんどかったりする。

ずっと家にいるというのも、思った以上に疲れるものです。

休日であれば外に買い物に出たり、映画を観たりなんてできるけど、そんなことは当然できない。
ずっと机とパソコンにかじりつきっぱなしで仕事して、予鈴のチャイムなんてものも鳴らないから、昼食も忘れて延々と仕事を続けてしてしまったりする。
20:00くらいまで働いて立ち上がってみると、もうぼろぼろに疲れていたりするのです。
ぎゅうぎゅうの満員電車であろうと、体を動かし職場に移動するという時間は、意外にも運動を兼ねた気晴らしの時間になっていたのだな、ということを、初めて体で知ることになりました。

また逆に、自宅と職場の往復の日々が続き、疲れが最大に溜まりきったその先に、ようやくやってくる週末。
やっとたどりついた週末は、仕事の疲れもあるし、自宅の仕事もいろいろ溜まっているし、もう面倒くさいからずっと家で過ごそう。なんて思ったりすることがあるけれど、家にいたら疲れが取れるかと言えば、こちらも実はそうではない。家にいる方が疲れてしまったりする。


やっぱり休みの日は、動かない。のではなくて、普段の経路から外れた場所に体を向けなくてはならないということです。


適度な運動やストレスというものも、なくてはいけないものなんだね。

 

イカに塩をかけるた方が甘さがひきたつ。みたいなことかもしれない(全然違う?)。□

今日のカレー

 

ファミリーキッチンPU

 今週の御室カレー ”久在屋の京の地豆腐と
  チキンとキクラゲの山椒・ねぎかけチキンキーマカレー”(10点)

 

カレーを食べるつもりはなかったのです。

仁和寺観音堂の障壁画を373年来、初めて一般公開するというから、ふらり出掛けたわけです。
仁和寺を拝観して、昼の混雑時間を過ぎたころに、どこか適当なお店で孤独のグルメをするつもりだったんです。

が。

嵐電御室仁和寺を下車してすぐ目に飛び込んできたのです。ファミリーキッチンPUの看板が。
看板や店構えを見て、即決してしまいました。ここはきっと美味い。僕の動物的な直感がさちりました。仁和寺拝観後では遅い、今だ。今、行こう。

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そして、やっぱり、叫んだのでした(心の中で)。

 

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美味いっ!!

 

スパイスは飛び過ぎず、抑え過ぎずの絶妙な味わい。
鶏肉と豆腐とキクラゲが歯ごたえの絶妙なバランスをとっています。震えました。

 

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「御室カレー」という言葉はかつてどこかで耳にしていました。
他にもこの界隈のカレー屋はあるのかもしれないけれど、たぶんPUさんはダントツだと思います。

京都のスパイスカレー店は、名店が多いように感じます。
上品な薄い味付けを伝統として守り続けるという京都らしさが、スパイスカレーにもしっかり根付いているというか。
味付けとか素材とか総合的に、なんとも上品なんです。
今、思い出しながらブログを書いているけど、また食べたくなってきている。

その後見た仁和寺の障壁画が薄れてしまうほどの(障壁画すごかったです)、ホームランに当たってしまいました。

仁和寺の拝観に行かれる方は是非。行かれない方も是非。□

今日の一冊

 

「罪の声」塩田武士 著 講談社(6点)

 

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昭和最大の未解決事件の一つ「グリコ森永事件」をモチーフにした社会派ミステリーである。

その日までテーラーとして質素でありながら幸せな日々をすごしてきた曽根俊也は、ある日自宅のキャビネットから謎のカセットテープと英語で書かれたノートを発見する。
カセットテープには30年以上前の犯行に実際に使われた、犯人から警察への身代金引き渡しの指示の声が録音されていた。俊也はその声が幼い頃の自分の声であることに気付く。

犯人の肉親である曽根俊也と、ジャーナリストの阿久津の二つの側面から、30年に亘り闇に埋もれ、時効となった事件の真相が明らかにされていく。

当時幼かった自分も事件のことはよく覚えている。
小学校の漫画クラブに所属していた友人は、事件をギャグ漫画にして発表していたりした。
そんなときから今までずっと、この事件は大手菓子メーカーへの身代金を目的とした恐喝事件であると思い込んでいたのだが、実際は学生運動に始まる社会体制への闘争が発端となり、身代金ではなく強迫・恐喝による株価操作を通じた金銭の搾取が目的であったことを知り、驚いた。
あくまでもフィクションとして描かれているので、本書で明かされた事件の真相も、実際とは違うのかもしれない。だが、かなり真実に近いところまで肉薄しているのではないか。そういう勢いのようなものを感じた。

知らず知らずのうちに自分の声が使われ犯罪に巻き込まれていたという事実を知った主人公を通じて、家族の絆を描き出そうとしたテーマも物語の堅牢な骨格となっていた。

事件の真相の驚きと、タイトル「罪の声」に込められた家族の絆というテーマ。

2017年本屋大賞を受賞したのは、フィクションでありながら事実を超越したようなこれらの描写にあったのだろうと思う。

ただ、1つ残念だったのが、文章がやや読みづらかった点である。
事件とは関係のない説明や描写が多く、また誰が何をしたとかといった状況がイメージしづらかった。
読むときの流れやリズムがいちいちその蛇足で中断されてしまい、折角の堅牢なテーマが埋もれてしまっている印象を受けた。
映画化されるらしいが、これらの欠点が脚本と映像でうまく解消され、あるべき姿で表現されることを期待したい。□

 

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罪の声_人物相関図

 

誰よりも先にジャイアント馬場のモノマネを完成させ、
初めて人前で披露した人間は誰だったろうか。

ジャイアント馬場のモノマネやりまーす。アッポー!」

今や、そこここにいる誰も彼もが気軽にできるモノマネは、

正しく言えば、

ジャイアント馬場のモノマネを生み出した人のモノマネ」をしているだけなのである。

まだこの世で誰も表現したことのないモノマネを完成させた人は、おそらく、ずうっとジャイアント馬場を観察し続け、いろいろな音を出してみて、「アッポー」に近づいて行ったに違いない。今のような豊かな音響、映像、録画設備があったわけでもない時代だ。さぞかし長い試行錯誤が続いたことだろう。

オリジナルを生み出すパイオニアという存在は常に、前衛であるがゆえの孤独と戦い続けるのである。

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これまで自分が描いた作品を自分で見た時に感じていた、なんとも言葉にできない不愉快な気持ちはここにあった。

つまり、自分の絵は、いつかどこかで誰かが描いた絵の模倣をかき集めた絵でしかない。ということである。

これまで自分の脳裏に焼きこまれた多くの巨匠たちの傑作の表層をなめ、誰かが語った言葉を観念で受け止め、受け売りの作品を描き、受け売りのタイトルをつける。あたかも自分が初めて生み出したかのように。
我ながら、そのにおいが鼻につく。このにおいを完全に落とし切りたい。

そんなにおいがすべて消えたときこそが、初めて本当の自分なのではないか。

誰もが偉大なる先輩方の作品の影響を受けるはずだ。

だがそれらを咀嚼して、エッセンスだけを体の中に浸み込ませ、影響を受けたことすらもわからないほどにDNAに焼きこんで、ようやく「オリジナル」を宣言できる。

守破離の離とは、そういう所を指すのではないか。

早くても遅くてもいい。確実に「離」を目指さなくてはいけない。それまでずっと不愉快は続くに違いない。□

今日の語録

「あまねく挫折に光あれ

 成功 失敗に意味はないぜ

 最終話で笑った奴へ

 トロフィーとしてのハッピーエンド

 願わなきゃ傷つかなかった

 望まなきゃ失望もしなかった

 それでも手を伸ばすからこその

 その傷跡を称え給え

 ロングホープ・フィリア」

菅田将暉「ロングホープ・フィリア」)

 

観察する

料理のことばかり考えています。

アトリエのそばにある喫茶店
唐揚げランチをいただきました。

久しぶりに来ましたがやっぱり
おいしくて人気の理由を再確認
しました。

大根
豆腐
人参
わかめ
もやし
玉ねぎ
三つ葉

どうしてこんなに美味いのか。
箸を止め、お味噌汁をじっと
眺めて見ると、
これだけの具材が入っていました。

美味いわけです。
美味さは手間に確実に比例します。

別の日にはとんかつを頂きました。
四元豚の肉がとても柔らかくて舌鼓を
打ちましたが、その横にある山盛りの
キャベツが気になりました。
どうしたらこんなに薄くシャキシャキと
さっぱりとおいしい切り方ができるのか。

最近そんなことばかり考えていて
やたらと箸がとまるので、食べる時間が
どんどん遅くなってます。

これが成果になればよいのですが。□