笑いの美学

銀座の三省堂で、ナンシー関の「記憶スケッチアカデミー」という本を見つけて立ち読みしていたのだが、あまりの面白さに店頭であることも忘れて大声で笑ってしまった。


カエルだのニワトリといった「お題」を、実物を見ずに一般人がスケッチしたものをナンシー関のコメントと共に掲載した本である。


ニワトリの足を4本描く人がいるということは噂には聞いていたが、その本に掲載されていたニワトリはそのイメージをさらに超越していた。
その「生物?」は哺乳類の4本足をもち、いわば「トサカをつけた猿」であった。ニワトリというよりも地球外生命体のスケッチといった方がしっくりくる出来栄えだ。
しかも笑いを狙って描いたのではなく、作者の全力を感じる線であるのがまた狂えるほどにおかしい。
他にも「アントニオ猪木」というお題では、なんとかあの「アゴ」を描こうとはしているものの、クッキングパパみたいになっているものや、どう間違えたか、馬場の16文キックを描いている輩もいる。


散々大笑いして本を置いた後、あまりの爽快感に我ながら驚いた。
思えば、これまで人を笑わせることが多かったが、自分が笑うということは皆無に等しかった(自分を心から笑わせうる人間はこの世にそう居ないと自負している)。
今回、笑いというものがこれほどまでに自分を癒すことを発見したのである。


これからは笑いのイベントにも積極的に行ってみようかと思い始めている。□