読書 「蛇行する川のほとり」 恩田陸著 (8点/10点)

恩田陸の作品が好きである。


つまみ食い的な読み方をしているので、なかなか読み進まないのだが、いづれ全部読破したいと思っている。
但、今のところ読むスピードよりも執筆のスピードの方が早いようで追いつこうにも追いつけずの状態が続いている.....。


恩田陸作品はSFとかミステリとか様々な世界が描かれるが、個人的には中高生を主人公にした青春もの?が一番好きである。
何にでも感動できた多感なころ。恋をおぼえた初めのころ。小さな秘密を持ちたかった頃。秘密をもって怯えていたころ。そんな感じのなつかしさや、ちくっとした痛みが共存していた青春を思い出させてくれる。


六番目の小夜子」や「夜のピクニック」もよかったが、今回の「蛇行する川のほとり」も共通してこれらの10代の瑞々しさや痛みのようなものがあふれ出している。そして登場する女の子には何かミステリアスな秘密があったりする。そこが好きなのである。


三部構成でそれぞれが違う女の子の視点に変わる描き方や、酒井駒子さんの装丁も作品のイメージにあっていたと思う。
過去に一体なにがあった?というミステリの要素も含まれているが、実はそれらは多感な子供たちを表現する一つの手段であって、種明かしはどうでもよいのかもしれないとすら感じた。


時間のたっぷりあった学生の時期に、みんなで集まって学園祭の演劇のための背景画を描く。という設定そのもので既に「おちていた」といえる。□



●前回読んだ本→「旧怪談」京極夏彦