「リング」の中田秀夫監督の最新作ということで、また十八番の「あの絡みついてくるような後味の悪い恐怖」が炸裂するのかと期待していたが、今回そういった映像技法はほとんど使われていない。
古典怪談である「真景累ヶ淵」をストーリーの柱にしてはいるものの、本作は怪談というより人間のもつ嫉妬だの情だの生命力だの。そういったものを主題にして描いている感じだ。
何はともあれキャストがすごかった。
主人公の新吉が出会う女性の誰もがこれでもか!といわんばかりの艶っぽさで迫ってくる。
黒木瞳を初めとして、井上真央、麻生久美子に木村多江。微妙に年齢をずらせた色気のある配役だ。嫉妬や情念を描くのにまさにベストな布陣で臨んだといえる。
その中でもやっぱり黒木瞳の演技はすごかった。壮絶だった。色気を越えた恐怖だった。
形のない不幸や事故を「怪談」という形におきかえて人に伝えていく、まさに日本の文化を存分に味わえる傑作だった。
欲を言えば、もうちょっと中田監督ならではの恐怖映像をちりばめてほしかった気もする。
あと主題歌=浜崎あゆみはナシでしょう。何故ゆえに「怪談」に浜崎なのか?全然意味がわからない。□
●前回見た映画→「アズールとアスマール」