読書「腑抜けども、悲しみの愛をみせろ」本谷有希子著(8点/10点)

トップランナー本谷有希子女史の話を初めて聞いたとき「あ、自分に似てるな」と思った。
一言でいえば彼女も自分も「変態」なのである。


誰もがどうでもいいと思っているようなことを、しつこくしつこく病的に追い詰めていく感じ。深く深く掘り下げてやがて石油を掘り起こすかのような(石油が出ることは稀かもしれないが...)。


本谷有希子女史の作品には決まって「性格の悪い人」が登場するとのこと。
本作に出てくる澄伽も笑ってしまうほどの性悪女である。憎悪がDNAに埋め込まれているほどの。

澄伽だけではない。その澄伽をしつこく観察しつづける妹や、女房を殴り続ける兄。と、とにかくすごい変態のオンパレード?である。
が、そういう変態達を通してこそ主題の「人間臭さ」がコントラストとなって浮かび上がって来ている。
すっげえな。と思いました。
そういう意味で物語はおまけみたいなものなんだけど、しっかりどんでん返しのようなオチまで付いていて、サービス精神も忘れていない点もすごかった。


今度は「劇団、本谷有希子」の方も見てみたい。□



■前回読んだ本→「檸檬」梶井基次郎