展覧会「井上雄彦 最後のマンガ展」(1000/10点)

(注)本ブログは自分への備忘録を主目的にしているので、展覧会の内容を踏まえた感想を赤裸々に記載しています。ので、これから行く人は読まないほうがいいかもしれません。


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「最後のマンガ展」。


すごいものを見てしまった.....。


これまでに見た展覧会の中でも屈指の展覧会だと思う。というかベスト1か?


150ページ近くに及ぶ完全書き下ろしの「バガボンド」の外伝にあたる作品を、視聴者が足を使って読み進んでいくという前代未聞のマンガ展覧会である。


10cm四方の小さなサイズのものから200号近くに及ぶ巨大画までの150枚。
イラストボードを使い、和紙を使い、ときには直接壁にまで描いている。


墨一色あるいは鉛筆。黒と白。それ以外の色は一切使っていない。


一枚一枚が「白」を活かした日本ならではの絵画とも取れる作品である。
そして、それらがどういう大きさで、どこに展示されるのが最適であるか、が徹底的に考え尽くされている。


死を目前にした晩年の武蔵から始まり、母に抱かれるまでの赤子の時代まで、時間を逆行する物語の中に「生と死」「友」「母と子」という普遍的で深いテーマが描かれている。


2Fから1Fに降りた先に見える、暗闇の中に光る一枚。
そこまで歩く距離までもが物語の一部になっているように感じられる。


1Fの大広間に入ったときに目に飛び込む「母と子」の巨大画。
絵を取り囲む空間そのものがはかりしれない大いなる力を感じさせ、自分もが赤子に引き戻されたような錯覚すら感じる。


そして最後の部屋には実際に砂浜が作られ、視聴者の感覚に直接訴える徹底した演出がなされている。



空間の美しさ、線の美しさ、明・暗の美しさ。それらを味わえる日本人に生まれたことを本当に幸せだと思う。


これこそ、まさに胸を張って世界に示すことのできる「日本人の仕事」だと思う。


井上雄彦と同じ時代に生きることができて本当によかったと思う。□


追伸:
外は大雨なのに数百メートルの列。会場を出た19:30でもまだ列が続いていた。閉館は20:00だというのに....。
まさしくこれは21世紀の「事件」だ。