期待以上のすばらしい作画と脚本だったと思う。
最低限の言葉と映像で本質だけを伝える技術に粋を感じる。
が、何かがひっかかっている。物語的に。それが何かをずっと考えている。
「僕は子供、あなたは大人」
というセリフが本編中やたらとでてくる。
子供ってなんだ?大人ってなんだ?。
主人公らキルドレと呼ばれる存在は、年をとらず永遠に思春期のままの「子供たち」とされる。
が、タバコもすえば、異性と交わることもあるし、子供も作ったりもする。
大人がやっていることと何ら変わりがない。
ずっと「子供」と言うから、ぬいぐるみやおもちゃ等にずっと興味を持ち続けているのかといえばそうでもなく、長く生きている分、精神は成長しているようで言動も大人びている。
そのくせ本編には「大人」という存在も出てくる。
子供と大人の境界がわからない。
大人・子供という名称が混乱を招いているのではないか、と思った。
子供=被害者。生まれながらにして戦うことを宿命付けられた人。物理的な肉体成長なし。
大人=加害者。子供を傍観する人。物理的な肉体成長あり。
と個人的に言い換えてみた。
これまでの歴史において、本編中の子供たちのように理由も分からず戦いを強いられたケースというのはあったと思う。
実際の世界と異なるのは、彼らが戦わなくてもいい背景で戦いを強いられているという点だ。彼らが葛藤するのは「なんで俺たちだけ」というところにもあるのではないか。
永遠に思春期のままといいながら戦いで死ぬわけだから1000年も生きているわけでもない。そして死んだとしても過去の記憶をもったまま蘇るわけでもない。
要は、本編中の「子供」は「自分が成長しない、ずっと生き続けている」なんてことを認知する前に死んでしまうわけで、そのくせなんでそんなに葛藤するのか、がしっくりこないのだ。
ラストに入りそこに自らの出生の秘密がからんでくるが、それで葛藤の理由が氷解したかといえばそうでもなく...。
このもやもや感が押井監督作品の味といえばそうなのかもしれないが。
う〜ん、まだもやもやする。□