ねがい

台風の目になりたい。


良いのか悪いのか、これだけ歳をとっても未だ台風の目になりたい。


人がやっていることの周りを回っているだけでは全然もの足りない。


そこは自分の居場所じゃない。


自分こそが人を振り回す存在でなくてはならない。台風の目でなくてはならない。


自分の中ではそういうパピヨン魂がまだまだみなぎっている。


そのくせに、未だ俺は人の作った作品に振り回され続けている。


最後のマンガ展重版@大阪に行ってきた。


上野の森での初版を2回見ているから、内容については周知のとおりだった。


でも、何度見ても井上雄彦の仕事はすごい。しびれる。


最後の、母に抱かれる武蔵の姿、には涙があふれる。


井上雄彦を中心とした台風の風力ははかりしれない。


俺もそんな台風の目になりたい。


だが、ふと冷静に考えると、ひとつの仕事を徹底している、その結果なのだ。


現代はものがあふれ、豊かになり、なんでもえらぶことができる時代だ。


その中でいかにふりまわされず、自分のなしとげるべきことを絞込み、そこに注力するか。


そういう自己管理、自己制御力。そういったものがなくてはとてもこんな仕事はできない。


一見、華やかに見える仕事の全ては、たぶん大変多くのものを捨てて、犠牲にして、ひとつに集中、注力しているのだろう。華やかな一面だけみて軽率にうらやましがるのは避けなくてはならない。


でも。それでもしかし。


俺は台風の目になりたい。


ゲームをやったり、テレビをみたり、マンガを見る時間を捨ててでも。


やはり、俺は自分の生きていること証である「描くこと」で台風の目になりたい。のだ。


そういうことを改めて思い出させてくれる展覧会だったと思う。


さらば、天保山。俺は台風の目になる。□