美しい人。

イチロー選手が、11年連続の200本安打にあと16本で届かなかった。との報道があった。


「なぜか晴れやかですね」
「ようやく続けることに追われなくなったのでちょっとほっとしています」
「200本って結構難しいんです。皆さんが思っているよりもうちょっと難しいんですよ」



それ以上先の世界を人類史上始まって以来、誰一人見たことがないのである。そのような前衛中の前衛にいる人に、我々はただまぶしく目を細め、見上げ、見守るしかない。


きっとこの11年間、最後の試合の最後の打席の最後の瞬間まで、200を目指していっときも気を緩めることはなかったのだろう。


そういう境地にいた人がようやくひとつの仕事に決着をつけて語った言葉である。


涙するでもなく、背を向けるでもなく、とても潔く、謙虚に、簡潔な言葉で自分を語っている。全力であり、悔いは微塵も感じられない。なんという美しい言葉だろう。なんという美しい人だろう。


毎年続くその、前人未到の偉業を見守っていた一人としては、とても残念な結果ではあるが、心から「お疲れ様でした」とお伝えしたい。


そして「来年も次なる新たな目標に向かってがんばって下さい」とお伝えしたい。


勇気をくれたことに感謝したい。俺もがんばるよ。□