アトリエのメンバーをスケッチ教室に誘ったときのことである。
ある女性から、
「行きません。絵なんか興味ありませんから」
と断られた。
「じゃあなんでアトリエに来ているの」という質問がさくっと別の女性から出た。
誰もが思う質問であった。
だが、苦笑いが出るだけで彼女からの答えは無かった。
以前から少々つかみ所がなく、どういう人なんだろうと思っていたのだが、最近になってようやくわかってきたような気がする。
彼女は、探しているのである。
「自分が没頭すべきもの」を、探しているのである。
きっと絵はひとつの切り口でしかないのだろう。
アトリエに来て猿のように絵に没頭する連中に囲まれてみて、一体何が彼らをそこまで駆り立てているのか、を知りたいと思っているのではないか。
絵に限らず、人間を駆り立てるものの本質を見つけて、自分も何かに没頭するということを経験してみたい。と思っているのではないか。
「絵なんか興味ありませんから」はあくまでも絵はひとつの手段であって興味があるのは「没頭するもの」なのだろう。
思えば、こういう人こそが世の中には多いのではないか。
散々苦しんでもどうしても続けてしまうようなもの。むしろ苦しむほど更にもっと上を目指していこうと思えてしまうもの。
みんなそれを探している。それが「夢」というものなのだろうか。
任天堂の岩田社長と糸井重里の対談で、「それを見つけられた人はしあわせです」というフレーズがあって、ふと「俺ってもしかしてしあわせなのかな」と思ったりした。
描いているときは苦しくてしょうがないんだけどな。
彼女の夢探しに少しでも力になれれば、と思う。□