狂わせたいの。

名古屋にてわたなべゆう氏の展覧会を拝見した。


会場に足を踏み入れるや否や、視覚を圧倒するあふれる魅力の結晶。


視覚だけでなく、においも、音も、味も。全ての感覚へ情報が流れ込んでくる。


言葉にできない。好き。全部好き。こんな作品を俺も作りたい。


優れた作品に囲まれていたら、自分の中で「きゅるん」という音がした。


「この絵ください」


気がつくと口走っていた。


作家の作品を買うというのは初めての経験であった。


もともと自分は作る側であり、買う側ではない。そう思っている。
これまで優れた作品に出会うことはあっても、買うという発想に至ることは無かった。


「狂わされてしまったのだな。」と思った。


本当にそのとおりの感覚だった。
条件反射のように、頭の回路を経由せずイキナリ「購入」に飛んでしまったような。


狂わせるってこういうことなんだろうね。


ふだんの理屈などお構いなしに、それ以上の圧倒的なチカラが全部を流してしまうような感覚。


そういう経験ができたことが自分にとってすごくうれしいことであった。


こんなふうに、いつか自分も誰かを狂わせたい。そう強く思った。


狂わせたい。そして、狂わされたい。


そんなことを考えながら、購入したわたなべゆう氏の作品を眺め、今宵も酒を愉しむ。□