面倒くさい日本人

いきつけの居酒屋がある。


雰囲気も良く、酒もうまい。大将も気さくだ。


だが、最近その店に足を運ぶ機会が減ってきている。



日本人はやっかいな民族だ。


地域や、季節で、旬が動く。


客は旬の動きに期待をいだき、居酒屋に足を運ぶ。


だから期待に応えられない店は、いずれ客に飽きられてしまう。



かつてフランスの大型スーパーが日本への進出に失敗したという話があった。


おそらく日本人の、このきめ細やかで面倒くさい要求に応えられなかったのではないか。


居酒屋も同じである。


日々変わっていく四季とそれにあわせたその地域の旬。


その変化に常時、柔軟に対応していかなくてはならない。


いつも客に驚きのギミックを仕掛け続けていかなくてはならない。



だがその面倒くささに対応してしまうのが日本人なのだろう。


そこに評価があっての世界無形文化遺産・日本食なのだろう。


「いつも同じものを出す」ではたとえおいしくても、客はいずれ離れていってしまう。


そしてこの厳しい戦いを続けられる店、戦いに勝ち残った店に客は集まる。
客の舌はいつも厳しい。



翻って、自分が作っているモノも、お客さんからは常にそういう見方をされている。という現実。


いつもそのときの一瞬が入っていて、ときめきを感じるもの。


そんなものづくりを永続的に続けていかなくてはならない。


止まったら終わりなんだ....。この戦いは一生続く。


それがこれまでの日本を支えてきたし、それがこれからの日本を支える。




そうはいっても、客はいつも気まぐれだ。僕もいつも気まぐれだ。


今週末にはまた大将に会いに行ったりしているのだよ。□