僕はアナログ派です。断然、アナログ派。
電子メールよりも万年筆で手紙を書くことの方が好きです。
むしろ、手紙を書く機会を自分から作るくらい、好き。
脳から手へ、手から紙へ。自分の想いが直接紙に投影されていく感触が好きだ。
絵画制作も漫画制作も、この延長線上にあるという感じがしている。
ものづくリストとして「手仕事」を大切にしたい。
ずっとそう思っているし、これからの人生もそれを曲げるつもりはない。
そんな自分が、今、デジタルで漫画を描いている.....。
これはいったいどういう風の吹き回しなのだろう?
デジタル制作をして最初に感じたこと。それは、まさにこの一言に尽きる。
「ドーピングをしている」
なんてったって、ツールがとても優秀なのである。
なんどでもやり直しがきく。なんどやりなおしても原稿が傷まない。
反転もお手のもの。ベタ塗は瞬時に終わる。鉛筆も消しゴムも不要。
なんか、とても「ずる」をしているように感じてしまうのだ。
だが、仮に「全員がドーピングをする」ということが前提のスポーツ競技があったとして、自分一人ドーピングしないで戦う、なんて言ったら当然、惨敗だし、「ばかじゃないの?」となってしまうのである。
この20年で漫画制作の世界にも、このような劇的な変化がやってきてしまっていたのであった。
1度の失敗が致命傷になるアナログでの制作スタイルは、もはや時代錯誤になっているのかもしれない。
.......少し切なくなる。
確かに、社会一般の仕事も、電子メールやWEBでの検索・調査が常識になっていて、ただ一人、調べ物は図書館で。文書は全部手書きで郵送で。なんていったら、明日にも会社をクビになってしまうだろう。
時代は大きく変わってきている。ひとまず漫画はデジタルで描く。それでも僕はこれからも多くのところで時代錯誤で生きていくと思う。
楽しげに見える世界だったけれど、舞台裏は結構、もんもんとしていたりするのだ。
この葛藤。さて、この冬にはどんなものがでてくることやら......。□