満開の桜は美しい。
世界中の誰もがその美しさに目をとめる。
だが日本人が感じている桜の美しさは、
外国人が感じる美しさよりも更に一歩深いと思っている。
日本人にとっての桜は日本の四季に結びついている。
そして日本の四季は日本人の人生に見立てられている。
日本人は、人生の長い試練を冬に見立て、
試練の後の束の間の安らぎを春に見立てる。
四季の変化を人生の見立てとして、
全身で受け入れられる体質を日本人は持つ。
だからこそ、日本人にとって、満開の桜はいっそう輝く。
外国の地でも桜は咲くのであろう。
だが物理的に桜を植えたところで補えない
圧倒的風土を日本の四季が、日本人がもち備えている。
ここに日本の最後の美学の誇りがあるのだと願っている。□