One Life

近所の和菓子屋で赤飯を買った。

おはぎや団子を長く売っている老舗である。

おいしい赤飯である。

隣は町の小さな古い書店。

入口には最新の雑誌を置くラックがあって、狭いスペースを

最大限に活用して文庫本や漫画、文芸書が並んでいる。

ふだん、積極的に利用するわけではないけれど、

どちらも古き良き日本のひとつの形として、

前を通るたびに、少しほっこりとした気分でいたわけなのだが。

 


先日この和菓子屋と書店がほぼ同時に店を閉めてしまった。

 


どちらもシャッターの上に

「長い間ご愛顧ありがとうございました」の手書きの張り紙.......。


最近はどの店でも、店舗の物理的な大きさでネットの商店と

対抗していくやりかたを取り、見苦しい限りの便利さの背比べを

続けている。

そして、僕らも彼らにあおられた欲望の暴走を止めることも出来ず、

その見苦しい背比べの継続に加担している。

 

自分たちの生き方に何か背徳的な気持ちを持ちながらも、

あやかってしまう。そして何か大切なものを失っていく。

 

シャッターに張られた手書きの張り紙は、

一部のテープがほつれて風にゆれていた。

 

もしかしたらあの風は、僕らのため息のせいだったのかもしれない。

たぶん、きっと。□