友人と鮨を食べていた。
大変うまい鮨であった。
静かな店である。
が、近所のどこかから時折大きな歓声が聞こえてくる。
いったいなにごとか。
ファンが居酒屋に集まり、声援をおくっているのであった。
僕には野球のことはよくわからない。
が、それでもお祭りは好きだ。
理由はなくとも、わーっと歓声があがる場所があれば、
集まって一緒に騒ぎたい。
あの夜そんなエネルギーがいろいろな場所から噴き出していた。
それが日本シリーズなのだ。
鮨屋にはテレビは無かった。
それでも広島カープファンが時折近所で歓声を発信する都度、
試合の状況が漠然と伝わってきて、そのたび僕を興奮させた。
これがまた楽しかった。
全ては見えなくていいのかもしれない。
どこかとおくで行われているイベントの片鱗を感じ、
それを肴に酒を飲む。
これくらいがとても豊かなのだと感じた。
楽しみかたは千差万別。日日の変化を身に受けながら
作品を見てくれる方々の多くに楽しんでもらう仕事が
できれば。
そんなことを強く想った。そんな秋の夜なのであった。□