そこにしかない街

 

世界はコモディティ化が進んでいる。

 

東京駅界隈に林立する巨大な商業ビル群。
大阪駅界隈に林立する巨大な商業ビル群。
目隠しをされてこれらのビルの中にポンと
連れてこられたとき、はたして、
ここが東京であるか。大阪であるか。
を即座にわかるのだろうか。僕には自信がない。
どこをみてもきらびやかな町並み。そして
商業施設。華やかで美しいのはわかるが、
その街ならでは。がどんどん減ってきている。
かつて香港や韓国の繁華街を訪れた時も、
最早、日本の東京や大阪と大きな差異はなく、
「ここはいったいどこだ?」と感じた記憶がある。

先日、天満の居酒屋で飲んだ。

駅を降りてすぐ目の前に独自の居酒屋や飲食店が
連なる怪しげな路地裏が張り巡らされている。
大阪の魔界である。
我々が飛び込んだ居酒屋はまさにこってりの大阪!
というにおいたつようなドヤ街のど真ん中にあった。
店内は活気にあふれている。次々と客が来ては去り、
また次の客が来る。店に入ると席は奥から詰めてくれ、
と相席を指示される。
我々のテーブルの左の客は、学生の男女4名で
女の子がべろべろに酔ってこちらに倒れそうになって
くる。そして右側に現れた男女のカップル。こちらは
初対面であるにもかかわらず、
「うちら今広島から戻ってきたところやねん」と
女性の方がいきなり間合いを詰めてくる。
現在大学受験を控える息子を育てるバツ2の39歳とのこと。
男性の方は仕事で彼女と知り合った京大卒の飲み友達44歳。
なんとも不思議な二人組につかまって、結局最後まで一緒に
飲んでしまったのである。

天満は天満にしかない。

銀座は銀座にしかない。

京都は京都にしかない。

僕はそういう街が好きだ。

どれほど世界のコモディティ化が進んでも、

そこにしかない街を歩きたいものだ。

そこにしかない街で酒を飲みたいものだ。□