本当にやらねばならないことは何か。

どこにも増してとがっている!というわけではないが
スタンダードに美味くてちょくちょく足を運んでいる。
そんな蕎麦屋が近所にあった。

蕎麦打ちの大将と給仕をするおかみさんの二人で営業
している店である。
昼どきに行くと、満席であることが多かった。
そんなときはおかみさんだけでなく、もう一人パートの
女性が加わって店を回していることもあったのだが、
玉におかみさんがいらいらしていて、パートの女性に
きつい声のかけ方をしている姿を目にしたことがある。
蕎麦をすすりながら、僕は思ったのだ。
出来上がった蕎麦を客に給仕するという仕事で、何故
それほどまでにいらいらするのだろうか。と。
ほんとうに忙しいのは蕎麦を次々に茹でねばならない
大将の方なのだが、その大将は表情一つ変えずに、
たんたんと蕎麦をつくっていくのである。僕はむしろ
この大将の顔をみるために蕎麦屋に通っていたのかも
しれない。

「忙しい、忙しい」と人は言う。僕も言う。
だが、冷静に考えて、本当に僕らはそれほどまでに
忙しいのだろうか。
確かに目の前に次々と積み上げられた業務に日日溺れて
悲鳴をあげているのは事実かもしれない。
だけど、本当にやらなくてはならない仕事はその中に
一体どれだけあるのだろうか。
一度深呼吸してあたかも他人事のように客観的に自分を
見てみると、意外にもそれほどまでにやらねばならない
ことは無いのかもしれない。
僕なんかより、もっともっと仕事に埋没している課長が
涼しい顔をして僕以上の仕事をこなし、僕よりも早く
職場を去っていくのである。

やらなくていいことはしない。
やらなくてはいけないことだけやる。

課長と僕にある大きな差は実はこれだけなのではないか?
そしておそらくこの仮説は「ビンゴ!」なのだろう。

「忙しいかって?忙しいに決まっているだろ!」と
怒鳴る諸君。
多くの無駄な仕事に埋没してしまってはいないだろうか。
今こそ冷静に見つめ直してみたい。考え直してみたい。
本当にやらねばならないことはなにか。□