偽語録

「うまくいかないから面白い」

........?そんなわけないだろうと思う。
うまくいくから面白いのであって、
うまくいかなかったらつまらないに
決まってる。
一瞬、いいことを言っているようで、
よくよく考えてみると罠がはってある。
誤解して突っ走ると自滅する危険を孕む。
そういう言葉を僕は「偽語録」と呼ぶ。

偽語録は、本当の良い事を伝える以上に、
言った人間が自惚れたい、恰好つけたい、
そういう虚栄を主目的としたかのような
匂いが言葉からにじみ出ている。
「偽語録」は大抵言葉が足りていない。
だから危険な誤解を招く抽象性を持つ。
「うまくいかないから面白い」は、
一番近い言葉に置き換えれば、
「うまくいかないから卒業できない」
「うまくいかないから逃げ出せない」
「うまくいかないから次に行けない」
といったところだ。
そのどうしようもない人間のクズ感を、
「面白い」とひとことで丸めてしまう。
うまくいかないその瞬間を面白いなんて
感じてはいない。これは成功した人間が
過去を振り返るときに使う言葉で、いま
大変な道を歩いている人間にはただの
成功者の自慢話にしか聞こえない。

「人生は一度きり」

........?その後には何が続くのだろうか。
「だから嫌な仕事から逃げ出したい」
「だから犯罪をおかしてみたい」
といった危険な思想や逃げることを
正当化することにも使われてしまうのだ。
この言葉も価値ある業績を残した人が、
過去を振り返るときに使う言葉だと思う。
これから何かを決断する人が、自分を
慰めるために使うのはとても危険だと思う。

言葉は素敵だ。でも時には敵にもなる。

使うのは自分なのだけど。

言葉ってややこしい。

罠にかかってはいけない。□