激突!

20:30。自転車での帰り道。
いつもの闇を40分ほど走る。
ある地点で1台の自転車を追い越し、
その先にある坂を一気に登りきった。
するとすぐ後ろから自転車のライトが自分を照らしている。
先ほど追い抜いた自転車が自分の後ろにぴったりとつけて
きているようだ。
思わずスピードを上げ、ついてくるライトを振り切った。
しかしすぐにまたライトが後ろから自分の足元を照らす。
スピードを速めても遅くしても自転車はぴったりついて来た。
20分ほど走っただろうか。
やがてそれは不安に変わった。
いつもはゆったり走る自転車なのだが、かなりスピードをあげた。
それでも自転車はぴったりと自分の後ろをついてくる。
................怖い。
どこまでついてくるのだろう。まさか自宅までついてくるのでは...。
やがて横断歩道の信号待ちで止まった。
後続の自転車はぴったりと自分の後ろにとまったようだ。
なんだか恐ろしくて後ろを振り返ることができない。
青信号に変わったとき、自転車を手で押して歩くことにした。
後続の自転車を追い越させようとしたのである。
24~5位の男が自分をちらと見て追い抜いて行った。
あいつか。と思い、その後を見ながら自転車にまたがる。
今度は自分が彼を追いかけるような形になった。
後ろから彼を照らす我が自転車のライト。
男は不安そうに後ろを振り返ってくる。
お互い「いったいどこまでついてくるのだ、こいつ」という状態になり
更に延々と走ることになった。
互いに悪意はない。
本当にただの偶然なのである。
ただ20分~30分にわたる自転車走行において、
全く同じ方向を走るという行為はときには事件性を互いに抱かせてしまう。
相手が女の子であったとしたら「ストーカー!」と叫ばれたかもしれない。
こんなことが世界ではきっと頻繁に起きているのだろう。
だが1つ曲がり角を間違えたとき大きな事件になったりするのかもしれない。
何も起きてはいない、だが何かが起きてもおかしくない怖さを感じた。□