自分のために

「意地」で描くのはもう無理だなあ、と
思い始めている。
絵を描くと心に決めたときから「どんなに
つらかろうがきつかろうが絶対に描くんだ。
みんなができないことを僕はやるんだ」と
強く心を戒めて描き続けてきたと思う。
だけど、それを継続していっても、それは
少しも自分のためにならないと気づき始めた。

誰のために描くのか?
それは、僕自身のためです。
自分が楽しんで、自分が満足すればいい。
その結果、皆も楽しんでもらえるとなお良い。
そう思います。

でも尊敬する先輩方を見ていても、彼らからは
「もう後には引けない。押し切るしかない。
 楽しむためというよりも、
 勝つため。負けないため。」
そういう人が多い気がする。
でも意地は見ていて少しも嬉しくなれない。
僕はそんな姿に僕はなりたいのか?
と改めて自問している。

芸術は「力でねじふせるもの」ではなくて、
「彼方から自然にやってくるもの」
にしなくてはならないと思う。
へんな責任感をかかえ、力づくで押し倒しても
お互いちっともしあわせにはなれない。永遠に。
意地のためではなく、僕は自分のために描きます。□