天啓

人間にはもともと備わった素質・素養という
ものがあって、それがなんらかのきっかけで
外に引き出され開花する瞬間がある。

成人を迎えたころの自分は未だ、酒の美味さが
わからずにいた。
部活の飲み会で無理やり飲まされたり、大人で
あることを早く示したいがために無理にビール
を飲んでいたころがある。
そんなある猛暑のどうしようもなく乾ききった
1日を終えた夜、どうしても飲みたいと
ぐっと喉に流し込んだ1杯のビール。その瞬間、
何か電撃のようなものが体を突き抜けたように
感じた。その瞬間から、自分は酒をこよなく
愛する人間となった。もともとあった酒好きと
いう素養が、あの1杯で一気に引き出されたの
だと思っている。

仏像についても同様だ。美術をこよなく愛する
自分であるが、仏像だけはどうもよくわからない。
頭ではいいものであると、分かっていても、
身体に染みわたって行かない年月が長く続いた。
それでも何かにつけさまざまな国宝や重文には
触れ続けていた。そんな中、今年の夏に訪れた、
唐招提寺の廬舎那仏・千手観音・薬師如来
見た刹那、脳天に楔をぶちこまれたような衝撃
を受けたのであった。
そして自分は大の仏像ファンになったのであった。

素養というものは誰にでもある。
それを引き出すためには何か大きなトリガーが
必要なのだと思う。人々がそういうトリガーに
出逢え大きく開花していくことを願う。

今年は自分に潜伏していた、国宝・仏像を想う素養が
一気に引き出された一年だったと思う。

来年は絵画制作を通じ、自分の持つ「表現の素養」
が開花し引き出されるトリガーに出会いたい。□

 

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