一年遷宮

自宅のアトリエのビニールシートを
ようやく全て張り替えた。

モノが減ったわけではないけれど、
ホコリも汚れも無い、まっさらな、
ビニールシートが張られた狭い空間を眺めていると、
ようやく次の制作に向かえる気持ちが芽生えてくる。

お伊勢さんが60年に一度、社を引っ越すかのように、
僕ごときのような小さなものですら「引っ越し」が
必須なのだと強く感じる瞬間である。

目新しいすべてのものも、日常の繰り返しの中で
スペックダウンする。

新鮮なものが日を重ねる中で「日常」に落ちぶれて、
どうしようもない水準にまで落ち果てた時、
もう一度、心身ともに新しい気持ちで新しい仕事に
向かうために、非日常に引き戻さなくてはならない。
それが「遷宮」というものなのだろう。
最早、とてもこの日常にまみれた空間では制作など
できはしない、ただの着替えの間となったアトリエを
もういちど、制作ができる空間に引き戻すのである。
それが、僕にとってのアトリエの大掃除であり、また、
世間の誰もがいう「大掃除」なのではないかと思う。

「日常」の権化である自宅をリセットし、もう一度、
非日常の頂点に引き上げて、新しい仕事に向かう。

それが「大掃除」であり、日本の「年末」なのである。□