帰り道

夕方の帰宅時、人身事故があって列車が止まっていた。
一駅だから歩くことにした。
懐かしい場所だ。かつてこの界隈に住んでいたから、道は良く知っている。
正直なところ歩く時間もないくらい、追い詰められていたのだが、逆にこういう今だからこそ、歩いてみたら何かインスピレーションや発見があるかもしれないと思った。

「あれ、ここ田んぼがあったよな」

かつて田んぼがあった場所が消え、駐車場になっていた。
住宅街ではあったが、スケッチを始めたころ、田んぼと住宅という組み合わせが何か好きで描いた場所だった。
でももう、思い出の中にしかあの場所は無くなってしまった。

「あれ、ここも駐車場になってる。ここも」

結局自宅まで歩く間に、6カ所もの新たな駐車場を発見した。
好きだった場所が全部、駐車場になってしまう。

たぶん、所有者にとって土地をやりくりできる最も簡易な手段として、駐車場を選ばざるを得ないような仕組みになっているのでしょう。

はたして、これがわが国が謳う「美しい日本」なのでしょうか。

田植えができる宿とかいって外国人観光客向けに開放するとか、新しいアートスペースなどとして芸術の発表の場とするとか。なんかないのかなぁ。

久々のコンビニの肉まんを食べ歩きしながら、そんなことを考えていた帰り道でした。□