粋。ということ。

アトリエの仕事を片づけた後、たいてい、

「これからどうする?」とお声がかかる。

「飲みに行こう」ということだ。

というかそんなお声がけが出るずっと前から、
最初から飲みに行くつもりつもりでいる。

いつもなら尻尾を振ってその声に乗っかるのだけど、
個展に向けた制作が追い詰められていたから珍しく
「今日は描きたい(帰りたい)」といってみたら。

「無粋だな」

江戸の人間にとって粋と野暮はとても大事なことばである。
一文無しの男が人助けのために借金した金を全部あげてしまう
という江戸落語もある。
寅さんだってお金がないのに「うまいものでも食いな」と
お金をあげてしまうのである。
別にお金をあげることだけが粋というわけではない。
自分のことやつらいことを後回しにして、世の中が楽しく
回ったらいいと、からからと笑っている。そんな姿が粋だ。
江戸の人間はいつも粋に憧れる。
粋であるために背伸びをしてしまう。
ましてや野暮なんていわれたらなんとしてでも。となる。
僕にもそういうDNAがある。

火の車の中であるほどに、
からからと笑いながら個展も忘れて今日も酒を呑むのである。

なーんて。ただの言い訳だけどねー。□