仮病

「話、聞いてた?」

小さいころから親にも友人にも、もう何十回何百回と言われ続けている言葉です。
スミマセン、もうこれは「病」です。
耳は音を確かに聞いています。だけど僕の頭の中ではいろいろな他の子タスクが何十個も同時に動いていて、マルチタスクが完全に追い付いていない。言葉がどんどん耳から漏れます。
さらに記憶力もそれほどいいわけでもないから、聞けていても、すぐに忘れます。
それが「聞いてた?」という言葉になって僕に返ってくる。刺さります。とがったナイフのように。

「病」と書いたけど、別に正式に医者が認めたものでもなんでもない。
ただ、これだけ言われ続けて、これだけ直せないものはもう「病」というしかないだろうと。
そして指摘をされるたびに僕は落ち込んで苦しむのです。
めげずに許して何度でも同じ話でも繰り返して聞かせてほしいのです。

頭の中でいろんな情報がものすごい短い時間で現れては消えて、また現れる。てなことが繰り返されています。
世界は美しくて、おもしろすぎて、忙しすぎて、目の前にある楽しいことも、次の瞬間にふっと現れた更におもしろいことに目を奪われて、僕はすぐに聞き漏らしたり、忘れたりしてしまう。恨むならば、このおもしろすぎる世界を恨んでほしい。
世の中の人が1ヵ月に1回おどろいていることを、僕は1秒に1回おどろいているように思います。雑草で驚く男です。そういう差です。
「また聞き漏らしやがったな」と笑って許してください。弱音を吐いてスミマセンが、何卒よろしくお願いいたします。

あ、健康なんですよ。全然。これは「仮病」です。
単に、自分の欠点に白旗を上げて、社会に認めさせようとしている悪あがきです(かっこわりいな)。□