必殺技が欲しい

今年の制作は難航している。

連日続く猛暑に体力や気力を奪われたともいえる。
胃を壊して集中力がそがれたともいえる。
だけどそんなことは見苦しい言い訳なのかもしれない。
ただ体力や精神力がおとろえてきているだけなのではないか。

でも、周りで描く仲間たちの中で僕は最年少である。
彼らは僕よりも大きな作品をひょうひょうと描いてカラカラと笑うのである。

一般的に歳を重ねるにつれて体力や精神力が落ちて制作に影響か出ることはないのだろうか。
先日酒の席でそんなことを先生に尋ねてみたのだ。
返ってきたのは意外な答えだった。

「むしろ昔よりも楽になっている」

若いころは体力任せで描いていたところもあるし、描くたびに迷いがあって右や左に絵が揺れていた。ただ、歳を重ねるにつれて、やりたいことが1つに絞れてきて、余計な体力を使うことがなくなった。最近はアトリエに入る前から、やることは決まっていて、あとはただ手を動かすだけになってきていると。

確かに、描くたびに悩んで、新しい構成や世界を考えなおしたり、勢いだけで描くことを続けていたら、若いとかは関係なくしんどいのかもしれない。そろそろ迷う自分を卒業したい。

でもね、そう簡単にはいかないのです。
やることが決まっているということは、スタイルがあるということです。
つまり必殺技が必要なのだ。
僕にとっての十六文キック。それさえ編み出せたら、最後に十六文キックで「待ってました!」とお客さんを喜ばせることができる。それを手に入れるまでは、楽に制作なんてできないでしょう。
残されている時間は限られてきている。
今のうちになんとか必殺技を編み出しておかないと、たぶんその先にあるのは引退でしょう。

まだ入り口にも入っていません。見苦しくもがく青春はまだまだ続きます。□