装置

10月に東京で開催された二紀展が神戸の原田の森ギャラリーに巡回中です。

開催の前日、陳列に参加しました。

会場に入ると、すでに運送会社各社から運び込まれた絵画、彫刻作品が会場に所狭しと並べられている。

どのあたりに絵を配置するかは、委員、会員、準会員、一般といった役職と、受賞者などの切り口でおおむね事前に決定されているようだけど、やはり絵は動きます。

委員の指示のもと、我ら陳列者たちは絵を右へ左へと動かして、ときには別の部屋から絵を運び込んだり、運び出したりもしながら配置を決めていきます。

10月の東京展で一度作品は見てはいるものの、異なる会場で、多くの作品に取り囲まれている自分の作品を改めて見ると、やっぱり大きなショックを受けるのでした。まるで、冬眠の真っ最中にたたきおこされた熊のように。

描いていたときはあれほどまでに「できた!」と自惚れていた作品が、なんとみすぼらしく見えることか。
正直、ちっとも面白くないんですね。
井の中の蛙、大海を知らず。とは、大げさかもしれないけれど、自分一人が「やりつくした」と思っているようなことも、他の作品を描いた人たちも全員、当たり前のようにやっているわけです。

会場でどう見えるか。楽しいと思ってもらえるか。そこには全く届いていない。

終わった。出品した。入選できた。と思ったとたん、もう脳にカビが生え始めてしまっている。

人間ってほんとうにぐうたらな生き物なのですね。(少なくともぼくという人間は)

会社という組織に所属してものを作ることから距離を置いて、自分一人で作るということをしたくて絵を始めたのだけど、気付いたらこっちでも組織に所属していて。
そして組織の力によりかかってなんとか描いている。

組織と言うのはいわば「装置」なんですね。

ひとりよがりをいさめる「装置」。

平凡な日常に刺激をあたえる「装置」。

すぐに怠ける自分を思い出させる「装置」。

主観になりきった目を客観の目にさせる「装置」。

自分一人で全部やる、なんて偉そうなことをいったもののやっぱり組織に助けられて生きているんだなあ。


二紀神戸巡回展。原田の森ギャラリーで開催中。入場無料。

お近くにお立ち寄りの方は是非ご高覧下さい。王子動物園でパンダみたついでにでも(笑)。□

 

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