今日の一冊

 

「闇に香る嘘」下村敦史 著 講談社文庫(10点)

 

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ここ近年読んだミステリーでも圧倒的な完成度だと思います。

中国残留孤児の家族という社会的な問題を骨格として緻密に謎が組まれている。
主人公が全盲であるという設定も、小説という形態にとても合っている。
文字を読んでいる自分も、映像が見えていないという点で主人公にシンクロ出来る不思議さにハラハラするのです。
そして、そこここにまき散らされた謎や伏線が、ラストで本当に美しく氷解するんです。
たった1行で読者を納得させてしまうほどのシンプルなトリックでありながら、決してその真実にたどりつけないよう、上手に読者を誤った方向に連れて行くんですね。
心理学の知識も無いと、とてもこんなトリックは思いつけないと思う。

素晴らしいミステリーに出会いました。思わず2度読んでしまったぜ(一度ブログに書いてましたね。それくらいの作品ということです!)。□