★ヒールの美学

映画「マッドマックス2」に登場するいかれた敵にヒューマンガスというのがいる。

上半身素っ裸でアイスホッケーのマスクをかぶりカートに乗って主人公マックスを執拗に追いかけるのである。

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続編の「マッドマックス3」ではマスターブラスターという、さらにいかれた敵が登場する。

筋肉隆隆の巨人の肩に小人が乗っている。
頭脳担当は小人、暴力担当は巨人。と役割を分担して砂漠の町の地下を牛耳る。

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こんな「誰が見てもおかしい」といういかれた敵が映画に強烈なスパイスを与えることで、ヒーローの活躍がますます鮮明に輝くのである。
視聴者は、敵役がおかしければおかしいほど「やっつけろ!」という気持ちになり、ヒーローとの決闘に白熱するのだ。
やがて「マッドマックス」に強い影響を受けた漫画「北斗の拳」が日本でも大ヒットするが、そのヒットの理由も間違いなく、ハート様やジャギ、アミバウイグル獄長といった、さらに凶悪でいかれた敵たちが作品を彩ったからだと思われる。

もちろんそんな狂った悪は虚構の世界の中だけにしていただきたいのだが、、悪=ヒール。という存在が物語を確実に面白くしているのは確かなのである。

先日、プロレスラーのアブドーラ・ザ・ブッチャーが引退をした。

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ブッチャーと言えばズボンの中にフォークを隠し、正義のレスラーを凶器攻撃で血だらけにする試合がとても印象に残っている。
電気椅子デスマッチという試合もあった。負けた方が電気椅子に縛られてスイッチを押されるという狂気の試合である。
かつて東スポの見出しで「ブッチャー、感電死!!」という巨大な見出しが出ていて「な、なにーッ!?」と買ってみたら、その大きな見出しの見えていなかった隅っこに小さな小さな字で「寸前」と書かれていてひっくり返ったという友人がいた。
フォークで攻撃するはずが、相手にフォークをとられて自分自身も血だらけになり、頭から血を流し眼をくるくると回している姿は、やがて愛嬌に変わって行った。

78歳までこの狂気を続けていたというブッチャーはまさにヒールの鏡だろう。
ニュースのインタビューでは、ブッチャー二世を育成するのが夢と語っていた。

心よりおつかれさまでした。と伝えたい。

そしてブッチャー二世の登場を楽しみに待ちたいものである。□