今日の一冊

パラレルワールド・ラブストーリー」東野圭吾著 講談社文庫(5点)

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毎朝並走する列車同士で出会い、目を合わせてきた見知らぬ者同士の男女。
最後の日に告白の機会を逃して失望する崇史だったが、しばらくして親友・智彦が連れてきた彼女が、毎朝電車で出会っていた女の子・麻由子だった。


「男は人生で3つの大きな恋をする」

1つめは、初恋。恋の免疫をつけるための、はしかのようなもの。
2つめは、セカンドラブ。今度こそは!と燃えあがる恋。
3つめは、生涯の伴侶となる大切な女性との恋。

いつか誰かが言っていた。まったくその通りです。

当然、3つめの恋にたどり着くまでには人生の三大悶絶とも言える「大失恋」を経なくてはならない。
失恋は苦しい。
一歩間違えたら犯罪にもなりかねないような狂気が芽生えることもあるが、そんな狂気が犯罪や事故となってさほど明るみに出ないのは神様によって人間が絶妙に作られているとしか思えない。

パラレルワールド・ラブストーリーの主人公・崇史が親友の彼女である麻由子に抱く恋心の壮絶さはそんな恋の苦しみが、リアルすぎるほどなまなましく描かれている。
きっと著者の失恋なども取り入れているのではないか。
自分の仕事やチャンスを全て棒に振ってでも。親友を裏切ってでも。彼女を手に入れるためにまっしぐらに突っ走る崇史。
恋をしている。失恋をした。なんて言葉は世の中ではどこからでも聞こえてくるが、その一言に封じ込められた苦しみがこれでもかとリアルに描き出されている。


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 注意
 ここから下は結論にふれますので、
 これから読む人は決して見ないように!!
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物語は「麻由子が親友の彼女であるという現実」と「麻由子が崇史の彼女であるという現実」が交互に、まるでパラレルワールドのように描かれるが、読み進むうちに実はパラレルワールドではなく、1本の時間軸上の話であることがわかっていく。
二つの世界の中間点にSFの仕掛けが組み込まれていて、そこここにちりばめられた謎がラストで種あかしされ一本につながるのである。

本当はそこで驚愕するということなのだろうけど、個人的には、SFのトリックよりも、三角関係の苦しさが物語の中心になっていると感じた。
SFによって本格ミステリの醍醐味が薄められてしまっているように感じました。
種明かしの前までは8点だったけど、ラストに向かうにつれて5点になりました。□