「オホーツクに消ゆ」論

 

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オホーツクに消ゆ」について書く。


オホーツクに消ゆ」は、ファミコンを社会現象に押し上げた「ドラゴンクエスト」の生みの親である堀井雄二氏作の傑作アドベンチャーゲームである。
ポートピア連続殺人事件」「軽井沢誘拐案内」につづく第三弾として登場し、時代を風靡した。

アドベンチャーゲームというジャンルはパソコンから始まった。
小説のように物語を一直線に読んでいくのではなく、自分が主人公となってコマンドを選択していくことで事件を解決していく参加型のミステリーである。

アドベンチャーゲームは「ポートピア連続殺人事件」を皮切りに大ブームとなって、「デゼニランド」「ミステリーハウス」「道化師殺人事件」.....等の名作が次々と発売されていった。
だが当時パソコンは50~100万円くらいする高額なマシンであり、子供が手に入れて遊ぶおもちゃではなかった。
ゲームに対する憧れや羨望は日々肥大化していくというのに、解消されることは決してない。
インターネットも無い時代である。情報もほとんど入ってこない。
数少ないパソコン雑誌を穴が開くほど眺める。少しだけの紹介記事や広告だけを眺めて、その先にある物語や世界をひたすら想像するだけである。頭がおかしくなりそうだった。

パソコンにはPC8800、X1、FM-77、MSXだのいろいろな機種があって、各機種に「オホーツクに消ゆ」は発売された。だけどパソコンの性能は全く違うから、画質や音質などに大きな差があった。そんな違いを眺めるだけでも楽しかった。

 

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オホーツクに消ゆ」はその名のとおり、北海道を舞台にした連続殺人事件を解決するゲームなので、未だ行ったことのない北海道を旅するような気持にもさせてくれた。それも一つの強烈な魅力だった。

摩周湖に行くとカムイッシュの島が見える。
阿寒湖では、看板に近づくと、まりもの説明を読むことが出来る。
アイヌの服を着て記念撮影をする女の子たちがいる。
阿寒湖、摩周湖、屈斜路子湖、ウトロ、すすきの........。
そんな数々の名所を主人公は犯人を追い、訪れていくのである。
旅情と共に連鎖的に起こって行く殺人事件。
実在の地名が出てくるものの、ゲームとして描かれているので当然実際のイメージとは異なるのだが、それがむしろ想像力を刺激して、未だ行ったことのない北海道への羨望を大きくして行った。

ファミコンアドベンチャーゲームが出るのはまださらに先のころの話である。
結局、MSXパソコンを持っている友人の家に通い「オホーツクに消ゆ」を遊ばせてもらった。画質は髙くは無いが、それでも物語は同じだし、存分に楽しめた。だが当時のゲームはカセットテープに入っていて、MSX本体にプログラムを読み込むだけでも30分くらいかかるのだった。なんとも時間のかかる大人の遊びだったが、そういったことも含めて楽しい思い出になっている。

パソコンへの圧倒的な憧れ。

アドベンチャーゲームへの圧倒的な憧れ。

北海道への圧倒的な憧れ。

大人への憧れ。

僕にとってのそんなものが全部「オホーツクに消ゆ」にはパッケージされていた。

その楽しかった、憧れた思い出は脳に焼き付いて、今になっても決して消えることがない。

欲しいものは手に入らず、眺めているだけだったけれど、素晴らしい時代だったと今になっても思います。□

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ファミコン版「オホーツクに消ゆ」のパッケージ