今日の一冊

 

「ぼぎわんが、来る」 澤村伊智 著 角川書店 (6点)

 

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第22回日本ホラー大賞受賞作。
映画化とのことで書店で積んで、文庫版の装丁デザインに目が留まった。

全三章で構成されている。
一章では、子育てにがんばる父。
二章では、その妻。
三章では、彼ら夫婦を襲った物の怪「ぼぎわん」と戦うオカルト作家と霊媒師。

...と、章ごとに主役が切り替わり、ザッピングする構成で物語が紡がれる。
章ごとの、主人公の心情や行動に引き込まれるが、それが次々と非情に断たれていく展開に驚いた。

「ぼぎわん」というモンスターの描写も怖いが、子育てにがんばっている父が、実は妻からは疎まれる存在だったり、親友と思っていた民俗学者が、友を心底憎悪していたりと、人間の本当の黒い心の描写が、「ぼぎわん」よりも怖かった。
もしかしたら、お世話になっている知人や友人も、僕のことを憎んでいるのではないか、などとていう疑心暗鬼にかられてしまった。

心霊のようなじわじわくる怖さというより、アメリカのモンスター的な怖さ。ラストの戦いもアメリカ的な迫力があった。□