今日のカレー

 

カレーハウス11 イマサ(8点)

 

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「ジャ~マンでぇ~す」

気の抜けた、かったるそうな声が店内に響く。

新宿西口地下にあるカレー店「イマサ」である。
昨今世間を騒がせているスパイスの効いた挑戦的・前衛的なカレーとは異なり、ベーシックでシンプルなカレーの店であるのだが、僕にとってはこのカレーが忘れられない味となっている。
高校生の頃、猿のようにテレビゲームに没頭していた僕は、週末になるとほぼ必ず、友人らと新宿に出かけ、安くなったテレビゲームのカートリッジを買いあさったり、ゲームセンターに入り浸る。という大変まぬけなゲーム三昧の時間を過ごしていた。
さらにまぬけなのは、誰ひとりお昼ご飯を食べに行こう。と口にするものがいなかったことだ。
単にお金が無かったからか、時間がもったいなかったからか。今になっても良くわからない。あるいは、まだお酒すら飲めない、外食にも慣れていない高校生だったから、外の店に入るのが怖かったのかもしれない。

そんな週末の過ごし方がしばらく続いていたのだが、あるとき、そんな空腹に耐えられなくなった友人の一人が、「もうがまんできん!」と立ち上がり、ついにとあるカレー屋に飛び込んだのである。それがこの「イマサ」だった。

料金も安く、ベーシックに美味い。
空腹であったこともあって、もりもりとイマサのビーフカレーを食べた。
ときには、ちょっぴり高めだが、コーンとウインナーがのった名物「ジャーマンカレー」もいただいた。

あれから20年以上が経つが、今なおあの味が懐かしくなって時折、イマサには足を運んでいる。
食器が変わったりはしたが、基本的にはカレーの味が変わることは無い。
イマサのカレーを食べるたびに、悩みも無く仲間たちとゲーム三昧で過ごすことのできた、まぬけな青春のひとときが思い出されるのである。

今なお、店は元気に営業していていつも満席である。きっと人それぞれのドラマがこの高コスパカレーにあるのだと思う。□