結晶力 Ver2.0

 

思いつきはなかなか形にはならない。


天空の城ラピュタで鉱山に住むポム爺さんが、
パズーとシータの前で鉱石を割って見せると、
わずかの間、美しい青い光が洞窟を照らした。

鉱石の中には空気に触れるとすぐに消えてしまう
飛行石という不思議な物質があって、
かつて太古の人々はそれを結晶にする科学技術を
もっていたという。

ぼくらが雑談でよく口にしている「思いつき」は
飛行石によく似ている。
「思いつき」は口に出たとたん、あっという間に
空気にのってどこかに消えてしまう。
その思いつきを、実際に「モノ」にするためには
とんでもない技術や遠回りする努力が必要になる。
飛行石の結晶をつくる果てしない技術のような。

ちょっとした作業やお金で簡単に手に入れられる
思いつきは、やっぱり浅い。
その脆さがあらわになってすぐにがらくたになる。


コロナビールが新しいビールの缶を発明したことが
話題になっている。
缶の上部と下部がネジのようになっていて、複数の
缶を連結できるという。

もとはスーパーで配布されるビニール袋をなくそう
という取り組みから、どのようにしたらなくせるか、
袋を不要とするには、もっと簡単にはこべたらいい、
ならば連結させられないか.....。
きっとそんなふうにアイデアが具体化して、かたちに
なっていったのだろう。

いくつもの思いつきがあったのだろう。
それらをただの思いつきではなく、誰もがすぐわかり、
便利に使えるかたちにした、全ての美しさに感服する。

 良いものになるまで、あきらめず試行錯誤を繰り返し、
手軽に手に入る浅いものに振り回されず、じっと耐え足元を掘り続ける。

美しいものづくりを実現するこの大いなる力を、
総じてぼくは「結晶力」と呼びたい。

ぼくらの生きる今は、結晶力が支える時代と言えるだろう。□

 

追伸:2008/8/24にも結晶力に触れてます。(Ver1.0)