新海誠監督を知ったのは確かNHKのTRだったと記憶している。
だけど、宇木敦哉監督をいつ知ったか。についての記憶はとんとない。
でも、当時の僕は「センコロール」を知ったとき、絶対に観なくてはならない。と察知した。
どちらも個人製作アニメーションというスタイルから出発点としている監督である。
アニメーションの制作は、本当に過酷である。
物語のプロット、脚本、絵コンテ、キャラクター設定、背景、作画、動画、撮影、編集、音響、アフレコ....。
10秒のアニメを作るだけでも、途方に暮れるような膨大な仕事をこなさなくてはならない。
まるで海岸の全ての砂を1粒ずつ拾い集めるような仕事である。
彼らは、それを一人でやりとげ、作品を完成させるというのだから、余っ程の狂気の沙汰であるとしか思えないのである。
「センコロール」に出会ったのは2009年。
27分の短編作品であるが、はんぺんのような得体のしれない生物・センコが次々に形を変えながらド派手な戦いを繰り広げるという斬新な世界設定・ストーリーは、一度見たら脳みそに焼き付いてしまうほどの強烈なインパクトがあった。とっさに買ってしまったDVDは今も大切な宝物である。
.......そして、あれから10年。
物語の続きを描く2作目が完成したという。
10年である。
本当に途方もない時間である。
雨の日も、風の日も、雷の日も。きっと作家の周りの環境にもいろいろな変化があったことだろう。
それでも10年間、その想いは決して変えずに、曲げずに作品を完成させたのである。
どうしても完成させたい、どうしても消えない、消せない、という強い想いがあったのだろう。
もうそれだけで、どんな作品であったとしても、喝采・祝福したくなる気持になる。
でも、そんな杞憂も全くの無駄であったと思えるほど、センコロール2もおもしろかったのである。
テツとシュウの対決という構図だった1の世界観がさらに広がり、新しいキャラクターたちと、語られなかった世界観が少しずつ明らかになっていく。戦いのシーンも更に迫力が増していた。
1作目と2作目の間にある10年間という制作時間も、技術や想いや作家の年齢等もろもろとなって、作品の中に焼きこまれているように思うのである。
作品そのものの面白さもさることながら、挫折せず最後まで丁寧に作り上げた監督の背中を想像するだけで、ぼくの中にも言葉にできない、熱い思いが沸き起こってくるのである。
1年に1作品でも。10年に1作品でも。時間がかかってもいい。でも決して気持ちはぶらさずに、確実に確かな作品を作りたい。しがない絵描きとしての僕も「いいものを作りたい」という気持ちが湧きあがってきたのである。
センコロールは魂に火をつける作品である。
あー、早くDVDにならないかしら。□