謝らない。

 

頼まれていた仕事をうっかり忘れてしまっていたとき、

「ごめんなさい、忘れていました」とは決して言わないようにしている。

 

その場しのぎで見苦しい言い訳を作って、なんとか信頼を保とうとする悪あがきに思えるかもしれない。

だけど、実はそれ以前に、相手のためにもその答えは決して言ってはいけないような気がしている。うまく言えないけど。

たぶん、どんな言葉を選ぼうとも、忘れてやがったな。ということは多分ばれてしまっているのです。

だけど、それでも「ごめんなさい」は、決して言ってはいけない気がするのです。

忘れてしまっていたのは事実だけど、ぼくにその仕事を頼んでくれたあなたへの信頼に、いまさらながらでも誠実に答える姿勢がある。ということを、僕は伝えたいのです。

そのシチュエーションにおいて「ごめんなさい忘れていました」では、真意が伝わるどころか、絆に亀裂が入ってしまうような気がするのです。

これまでに「ごめんなさい」と正直に答えたときに、何か見えない彼と僕との間にあった見えない信頼のベールのようなものが、ふっと消えてしまったようなことを何度か経験したことがあって、以来二度と謝ることはやめました。

そんなふうに思うのは、僕だけかもしれないけど。

そんなときは、しばらく言葉を黙考したあと「もう少し考える時間をもらえないでしょうか」などと答えるようにしています。

追い詰められた時の悪あがきでしかないのだけど。その中にも何か美学でこたえたいのですね。

まあ、そもそも忘れないようにするというのがベストなんだろうけどね。□