愛する娘を殺害され、犯人を追い詰め報復し、自分も自決する。という冒頭の大学教授の手記から始まり、事件はとんでもない結末を迎える。ミステリーとしての完成度はとても高い。
<以下、自分へのメモ ※注!!!! 全てネタばれしてます !!!!!>
・ミステリーとしての完成度は高い。だが、どことなく虚無的な文体や、主人公の法月綸太郎のキャラクターがどうも好きになれなかった。
・ジャーナリストを病院の外で待たせておいて、自分は裏口から勝手に帰ったり、ラストシーンでは生き残った犯人に病院で真実を語らせた後「死にたければどうぞ」と窓を開けて去るといったところについては、気分が悪くなった。ハードボイルドどころか、ただの嫌な奴である。
・自動車事故で妻は下半身が動かなくなり、当時妊娠していた息子も失った。
夫(大学教授)は、のこされた長女の頼子を最愛として育てたが、その頼子は何者かに殺害された。頼子は妊娠していた。
冒頭、そんな境遇の夫が、殺された頼子の復讐をすべく、担任教師を犯人として特定し、追い詰め、殺害するまでを手記として残している。この手記に疑問を持った法月綸太郎が調査を始める。
・真相:
頼子を殺害したのは、父(大学教授)であった。
父は、最愛の妻と息子を自動車事故に巻き込ませた頼子を、愛するどころか実はずっと憎み続けていた。
冒頭の手記は、頼子を妊娠させ殺害した犯人として担当教師を仕立て上げ、復讐と称して殺害し、自らも死を選ぶという形として計画的に残されたものだった。
父は、徐々に母に似てきた娘が、泥酔した父と関係を結び子を設けてきたことに、これまでの憎しみを爆発させ殺害したのだった。だが、裏返せば負い目を感じた娘が、無くした男の子をもうけるために取った行動だったのかもしれない。
・病院で犯人に真相を語らせた後「飛び降りるならばどうぞ」と窓を開けて去り、犯人が飛び降りるラストは、好きになれない。□