暗示の力

 

「昆虫を大の苦手とする女性が、
 それを馬鹿にする夫に復讐するために、
 夫の苦手な蜘蛛を催眠術で得意にさせ、蜘蛛を食べさせる。」

 

以前、探偵ナイトスクープでそんな依頼を放映していた。

蜘蛛を夫に食べさせるという以前に、まずは妻の方が、蜘蛛はおろかあらゆる昆虫が大の苦手ということである。
彼らの自宅は山中にあるため、一歩外に出れば昆虫王国である。
妻は、外出時には、防護服をまとい、顔も含め完全にガード。さらには虫よけスプレーを全身にかけまくって、それでも悲鳴を上げながら、虫よけスプレーをあちこちに噴出しながら出かけている。
テレビを見ている人は面白がっているかもしれないが、本人は命がけで苦しんでいる。これは本当に大変である。

結論からいうと、番組が日本屈指の催眠術師を呼び、術をほどこしたところ、半信半疑だった妻も夫も、まるでさっきまでの蜘蛛恐怖症が全くの嘘であったかのように、消え去り、蜘蛛と大の仲良しになってしまったのであった。
女郎蜘蛛をてのひらに載せて、かわいいかわいいと愛でている。
さらに、調理師に蜘蛛の天ぷらを作ってもらい、旨い旨いと食べたのであった(女郎蜘蛛は調理次第で充分食べられるようです)。


この映像に、自分は大いなるショックを受けた。


催眠術っていうのは、これほど簡単に人間の弱点を消し去ってしまえるものなのか!?


心に抱えたトラウマや欠点と思い込んでいるような人生の大きな障壁が、数分程度の催眠術・暗示でいとも簡単に取り除けてしまうという衝撃。

 

例えば、これまでにも仕事の目標なんてのを設定するときには、少なからず自分の欠点の克服、または克服ができた前提で、業績を上げる。というようなことを掲げることが多い。例えば、コミュニケーションがとても苦手な人が「コミュニケーションを得意にして、たくさんの人と円滑に対話して業務を推進する」といった目標である。
だけど、欠点の克服というのがなかなか出来ず、克服できることを前提として取り組む予定の課題にまでたどり着けない。ということが、毎年毎年、足掛け数十年にもわたって続いていたりする。
やがて、欠点は克服できるものではない、得意な部分を伸ばしたらいい。と、自分の欠点克服に見切りをつけ、問題を差し替えたりし始めるのである。

それほどまでに個人の欠点というもののは治すことが難しいものだと思っている。思っていた。
だけど、催眠術の暗示を使えばこれほどまでに簡単に取り除けてしまうのである。
これまでの自分の人生の中の葛藤やら努力やらは一体なんだったんだ?とすら思ってしまったのである。

 

小さなミスをいつまでも引きずる。

他人との間に高い壁を作る。

過剰な昆虫恐怖症。

行き過ぎた潔癖症

 

周りの誰もが気にもしていない些末なことに脅迫的な思い込みを持ち、自分だけでなく、他人もその思い込みに巻き込んで、日々の仕事や暮らしをお互い、無意味に息苦しいものにしている。
そういうことって、身に覚えがありませんか。

そういうことから、これまでどれだけ苦しみ続けてきて、これからいつまで苦しみ続けるのだろうかと思うと、暗い気持ちになる。

そういうものから、本当に脱却したい。そう心から強く願うようになりました。□