★素直

 

「やらなくていいことは、やらなくていいんだ」

 

そんな当たり前のことが、今更初めて体の中に沁みわたったように感じる。
その瞬間、これまで自分を縛り付けたものが解ける音をはっきりと聞き、体感して、不思議なくらいに気持ちが落ち着いてしまった。
もしかしたら、これを悟りというのだろうか。おこがましいかもしれないけれど....。


人には、自分が生み出した規則や、妄想や、思い込みによって、ずっとやり続けていることがある。一種の「狂気」である。
たとえそれが誰も期待していないことでも、世の中の役に立っていないことでも。あるいは、それが人に迷惑をかけていることであっても、やり続ける。

柔軟な人であれば、誰かの親切な忠告を素直に聞き入れて「そうですね。無駄ですよね」「やり方を間違えてましたね」と切り替えられるのだろうけど、多くの人間は、残念ながらそう素直ではない。少なくとも僕もなかなか素直ではない。
人によっては、そんな親切な忠告を敵意として受け止め、攻撃を返したりする者もいたりする。

それは自分が自分にかけた「呪い」である。

他人の忠告を聞かないことを選択した以上、その「呪い」は自分の内発的な力や時間的変化によって解除するしかない。
それはとてつもなく長い時間がかかる。
人の忠告を素直に聞ける耳を持っていればわずか5秒で解消することなのに、自分で自分を諭すには10年かかる。あるいは一生かかっても治せないかもしれない。


もしかしたら、今のやり方は間違えているのではないか。

もしかしたら、今のやり方は人に迷惑をかけているのではないか。

もしかしたら、もっといいやり方があるのではないか。


人の言葉に、素直になりたい。


常に自分を疑う柔らかさが欲しい。□