子供な大人

 

「好き嫌いをしてはいけませんよ」

 

さいころ親や学校の先生によく注意されたものだ。

好き嫌いの多い子供だったと思う。

アレルギーではないから食べれられないわけではなかった。

ただ単に、嫌いなものが多いだけなのである。

その上くそまじめだったから、残してはいけないなんて思い込みもあって胃が縮まり、さらに食べなかった。

あれから何十年もたってみて、今の自分を見ると、好き嫌いはかなり減ったと思う。というか、たいていのものは美味しくいただくことができるようになっている。

子供のころ「くさい」などという些末な理由で食べられなかった野菜やら肉やらは、大人になるにつれて「風味」や「味わい」という前向きな価値に変わり、むしろ「圧倒的に好き」になった。
においが原因で嫌いとしていたものは、今大好きなものベスト10に、ほぼ全てが入っているほどだ。

大人とはそういうものなのだろう。

子供のころ嫌だった細かいことは全く気にならなくなって、多くのものを大きな視点で楽しめるようになる。

..............と思っていたのだが。


好き嫌い、多すぎるぞ。僕の周り。

美味しいものやお酒が大好きなので、絵を描く仲間たちや、会社の同僚らと飲みに行ったり食事に行く機会が多い。さらに幹事をする機会もなかなか多い。
そんな中、生の魚が嫌だとか、野菜が嫌だとか、ハムが食べられないだとか。粉もんしか食べられないとか。
あまりにもみんなの好き嫌いが多いことに、驚いてばかりいます。
むしろ子供たちの「人参嫌い」だとか「ピーマンが嫌」よりも、余程たちが悪いように感じるくらいに。

仕方がないことなんだろうけどね、もう今更「好き嫌いをしてはいけませんよ」という年ごろでもないし。

ただ、今自分たちが親となって、子供にそんなことを言う自分こそがよほど好き嫌いが多いなんて言う実情に、声を小さくするか、好き嫌いを自分こそなくそうと見直すか。そんな感じでやっていくしかないのでしょうね。

なんだかもったいない気がするのです。

僕にとっては、食事が人生の中でとても楽しくてうれしいものの大部分を占めているから。

飲めないなら飲めないなりに、好き嫌いが多いなら多いなりに、楽しみ方があればいいのかもしれないな。□