外食、愛。

 

 

とんかつ、食べたいな。

 

 

真夜中に布団に潜り込んで目を閉じたら、ふと脳裏に、ぼぅっと、とんかつが浮かび上がった。とんかつを食べたい。

 

とんかつ。という、ことばの響きが好きだ。

 

どことなくユーモラスな響きがある。

チキンカツやビーフカツに並んで、ポークカツという呼び方もあるが、とんかつの方がしっくりくる。

逆に、ちょうかつとか、ぎゅうかつという言い方はあまり聞かない。とんかつだけが、とんかつと呼ばれることを許された奇跡の料理なのだ。

 

とんかつ。

まるで、クラスに一人は居る、ユーモアのある人気者のような。周りを軽く微笑ませる可愛げのある音の響き。

 

布団の中で、明日は必ずとんかつを食べよう、と決意して眠った。

 

翌日久しぶりにアトリエに行った足で、ランチはとんかつと決めていた。スキップでとんかつ屋に向かった。

 

ごく普通のロースかつ。でも美味い。

キャベツも豚汁もごはんもお替り自由だ。

 

まるで、刑務所から出てきたばかりの高倉健のように。

 

これからノアの箱舟にのる前に最後の晩餐をするキリストのように。

 

とんかつをむさぼるように食べた。

ごはん2杯、お味噌汁、キャベツも2回おかわりした。

このおかわり自由というシステムも、とんかつが元祖なのではないかと思うくらいしっくりくる。おかわり自由でないとんかつは、とんかつではない。

 

外国に行ったときに恋しくなる日本食といえば、寿司や納豆がまず挙がるだろうが、とんかつも間違いなくベスト5には入るだろう。

 

とんかつが大好きだ。

 

だが、つきつめていくと、いろいろな反動でとにかく外食がしたかったのだと思う。やっぱり体は外の味も欲しがるのである。□

 

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