一気に読んでしまった。
魂をえぐられるような物語展開。
素晴らしい文学的表現で古典の名作が現代に蘇る。
恋というものを知らなかった幼かったお初が、徳兵衛との狂おしい恋に至るまで、そして心中に追い詰められていく過程を、彼女を取り巻く遊郭の女性たちがたどった恋の末路と共に、文学的に描き出す。
社会的に許されない、徳兵衛との恋。心無い人間からのだまし討ちにあい、行き場所を失ってしまう二人の事件が絡まり、心中に引き寄せられていく過程がえぐるように描き出される。
二人の心中を結末とするオリジナルに対し、本作ではお初が自害するところまでは描かれながら、その後に徳兵衛がお初を追うように自害したかどうかかは描かれていない。
物語の結末にのりしろを持たせている点も、読後の余韻を残す。
近松門左衛門といえば、溝口健司監督の「近松物語」もあるが、こちらはもっとえぐい。
曾根崎心中は、心中に至るまでの過程が早めだが、近松物語は、禁断の恋に陥ってしまった二人が逃走に逃走を重ねていく過程はより長く、絶望的である。
こちらも歴史的大傑作なので、曾根崎心中を味わった後はぜひこちらも鑑賞したい。
そして、もちろん人形文楽での曾根崎心中もしっかり味わっておきたい。□