ざんねんな

 

コロナの騒ぎは続くものの、居酒屋は心の銭湯。

 

地元にある、ほどほどに有名な老舗居酒屋という店に、

あまり長居しないように、とアトリエのメンバーと行くことになった。

 

町はどんどん新しくなっていく中、駅近の一角に狭い路地裏に昭和な店が連なるエリアを発見した。こんな場所が、身近にもまだあったか。と心が弾む。

その日予約していた店もその界隈にあり、今となってはあまり見ないようなやや珍しい構造のビルの1Fにテナントしているところなどから、なかなか貫禄のあるお店だと感じた。

店内はカウンター席にテーブル席、そして奥にはお座敷もある。広く、落ち着きがある。

その日の料理はコースでお願いしていたが、出てくる料理や酒は旨く、これはいい店を発見した、と喜んでいたのであるが。

最後に、お願いした締めのご飯が、なかなか出てこない。

まあアトリエの仲間は、1杯の酒でいくらでも語れるような人間たちなので、給仕の遅さなどはあまり気にはしていなかったが、30分過ぎ、閉店時間がちらりちらりと見え始めたころに、さすがに遅い。と、店長らしき人に声をかけた。

 

注文が通っていなかった。

 

注文を受けたのは、アルバイトの若い女の子であった。

注文の上に注文が重なり、こちらのリクエストがはみ出してしまったのだった。

 

ふと思えば、ぼくらが通う居酒屋といった店で、アルバイトの女の子という存在を見るのは、この日、実に久しぶりだったと気づく。

かつては大手のチェーン店やらに行くこともたびたびあって、そこには学生のアルバイトくんが給仕をしてくれることもあったが、最近はそういう店にはめっきりいかなくなって、会うこともすっかりなかったのである。

だが、ここにきて、このTHE昭和なお店でアルバイトを見るということが一体何を意味しているのか、と考えると、

 

やはり、コロナなのである。

 

その日の店内も、ソーシャルディスタンスで、カウンター席も12人くらい座れるところ3組しか座っていない。テーブル席も1つおきに客を座らせている。さらに営業時間は切り詰められている。

そういった状況でのお店側の対応は、従業員を減らし、アルバイトを充てるなどして回転させていたものかと思われる。

従来の店員のように阿吽の呼吸で、もれなく、そつなく、給仕が進むようなことは、アルバイトでは十分に賄えず、その他いろいろなところでポカをしているアルバイトに店長らしき人の苦い顔が見えた。

 

いろいろなところで、しわが寄っているな、などと思いながら、ホタルノヒカリの流れる中で、食事とデザートをいただいて店を後にした。□