もーやんの怪談 その2

 

職場の庶務の女性の話です。

 

その女性のお父さんはすでに定年を迎えていますが、現役だったころ現場作業でいろいろな地方都市を出張で訪れていたといいます。これはそのお父さんの体験談です。

 

具体的な地名は忘れましたが、九州の小さな町に出張したそうです。

 

仕事を終え、町のはずれにある古いホテルにチェックインしたそうです。
築30年以上は経っているような古いホテルで、その日は、6階の一番奥、廊下の突き当りにある部屋に宿泊したといいます。
そのときは同じフロアに泊まっている客はいないと聞いていました。
食事を終え、シャワーを浴び、翌日の仕事に備えてベッドに入りました。
いつの間にか眠っていたようですが、深夜にふと目が覚めたといいます。

 

廊下で音がしたといいます。

 

廊下の反対側の一番奥から、自分が今泊っているこちら側の端の間を、誰かが走っている音がする。

 

向こうからこちらに向かって誰かが走ってくる。

そして部屋の前まで来ると、ぴたっと止まる。

そしてしばらくするとまた反対側に向け走り出す。

たっ、たっ、たっ、たっ。という音が、遠ざかり止まると、またこちらに近づき、部屋の前でぴたりと止まる。

それがずうっと繰り返されているというのです。

1回や2回なら誰かが急ぎの用事で廊下を走っていたのかもしれないと思えるけど、明らかにおかしい。しかも、その日、同じフロアに泊まっている客は誰もいないはずなのに。

 

この世のものではない。と思ったそうです。

そのとたん、金縛りにあったようになって体が動かなくなり、震えてベッドの中で一晩を過ごしたといいます。

いつまで走る音が続いていたのかは、わかりません。気づくと朝になっていたといいます。

あのとき、扉を開けていたとしたら、何がいたのだろうか。

どうなっていただろうか。今考えてもぞっとする。と話していたとのことです。□