セレンディピティ その2

 

丹波篠山を訪れました。

 

ぼたん鍋デカンショ節。黒大豆。

といったものが市を代表する文化・名産となっています。

徳川家康豊臣秀吉の残党たる外様大名を抑えるための要衝とした篠山城跡を町の中心に据え、その城下町として残される静かな街並みは文化遺産保存地区となっている。

そんな出会いだけでも充分、セレンディピティだったのだけど、

ふらりと立ち寄った、町家を改装したおしゃれな食器を扱う店。

幾多の観光地にならぶ、おみやげもの屋には、そうやすやすと惹かれることはない。

遠くまでやってきたという旅情と、そこでしか見られない街並みと、個々のお店のレイアウトやきれいに並べられた商品たちに、目を癒されながらも、まんじゅうならば、近所のスーパーでも買えてしまうし、食器ならば、生活雑貨店でも手に入ってしまう。ということで、購入までいたることは、極めて稀である。

だけど、稀であるがゼロではない。

その稀に出会えたということが、セレンディピティなのである。

 小さなビールグラスが欲しいと思っていた。

だが、その理想に近いものはそう簡単に見つかりはしない。

いつか見つかればいい。と頭の片隅に置いておきながら、そのいつかを待ち続けている。

それがいつか期待も忘れたころにやってくるのである。

 

まるで理科室のビーカーやメスシリンダーといったような実験器具のような、ガラス製のグラスが並ぶ。

親指の位置にくぼみができていて、つかみやすさを考えこんだデザインのグラスもある。

一瞬で、美々っと来ました。

ずっと待っていたものが、目の前に現れた。と。

ほぼ即決でした。

大きさも、持ちやすさも、材質も。全部が100点満点なのです。

 

「泡がよくたちますよ」

 

自宅に戻り、早速麦酒を注いでみる。シュワッと想像以上に泡が立って、あふれそうになる。これか!と心が躍る。

セレンディピティです。これがセレンディピティなのです。

 

町家のそばにあった、美術館でみた市指定文化財の「鼠草紙絵巻」。これもセレンディピティだったなあ。□