今日の一冊

 

「新装改訂版 水車館の殺人」 綾辻行人著 講談社文庫

 

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誰も来ない山奥に喧騒を逃れて建てられた水車館という奇怪な建築。
そこに父の遺した絵画作品と共に、デスマスクをつけ、車椅子で生活をしている藤沼紀一。父の遺した価値のある絵画作品を見に訪れる画商や外科医たち。
外は嵐で社会とは断絶された中で、家政婦が塔から転落死、絵が消え、父の弟子であった正木がバラバラにされ焼却炉で焼かれる。

まず、この殺人事件が起きる舞台設定が素晴らしい。
ありえない建築、ありえない登場人物、ありえない状況。この虚構感が一層物語を面白く演出する。

館の地図を見ながら事件を追いかける楽しさと、ミステリーの驚くべき結末。

どれをとってもとても素晴らしく楽しく読めました。

 

(以下、本人のためのメモ。完全にネタバレしてますので見ないように)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・事件が起きた1年前と、事件を解決する現在の章が交互に展開する。
・1年前に描かれる藤沼紀一と現在の藤沼紀一が別人であったというのが骨格。
・父の弟子・正木は藤沼の運転する自動車の事故で色覚を失い画家を断念する。
・正木は、自らおこした犯罪から逃れること、藤沼の莫大な遺産を手に入れること、藤沼の若妻・由里絵を手に入れること、を目的に、古川を殺害しバラバラにして窓からおとし、焼却炉で焼き、自分を死んだと見せかける。同時に、藤沼も殺害して自分は藤沼になりすましていた。
・藤沼を身近で世話していた家政婦を塔から突き落とし、現在の家政婦も歩いている自分を目撃されたため隠ぺいのため殺害した。
・中村青司作の水車館には、書斎暖炉内に隠しエレベータがあり、正木に殺されかけた藤沼はそこに逃げ込んだが、そのまま地下で死んでいた。隠しエレベータを見つけられず、藤沼の死を確かめられなかった正木は書斎に鍵をかけ出てこられないようにしていた。藤沼はそのまま死んでおり、地下からの異臭がするようになっていた。
・水車は事件にはあまり関係がない。