刈り初め

 

 

店長「今年もお疲れさまでした。
   二人がいてくれてとても助かりました。よいお年をお迎えください」

店員A&B「ありがとうございます。店長もお疲れさまでした!」

店長「実は申し訳ないのだけど....。
   このご時世ではあるけれど実家に帰らなくてはならなくて、
   年初の営業は4日からなんだけど僕は5日から勤務にさせてほしいんだ」

店員A&B「大丈夫です。店長不在の間は僕ら二人でやっておきますから」

店長「大変申し訳ない......年が明けたらささやかだけど新年会をやりましょう」

店員A&B「楽しみにしています。それでは店長良いお年を!」

 

.................といったドラマが脳裏に浮かんだ。

年が明けて散髪に来ていた。

刈り初めである。

いつもの同じ理髪店だがその日は様子が違っていた。
店長含め、3名で切り盛りしている理髪店だが店長の姿が見えない。
昼食にでも出ているのだろうか、と思ったが戻ってくる様子はない。
自分の前に2人の客が待っており、店員AとBはそれぞれ客の髪を刈ったり、髭を剃るなりの対応をしている。散髪をできるのは店員Aのみであり女性である店員Bは洗髪と髭剃りのみの担当である。
店員Aが散髪のみを済ませ、店員Bにバトンタッチし、店員Aが次の客の散髪をする。という自転車操業的な展開を期待するも、それぞれの客が求める要求にも差異があり、はっきりと仕事が滞っている。
いつもならば概ね1時間程度で終わる散髪が、1時間待ったところでようやく自分の番となるような状況である。
店員Aの手は、焦っているのか、へろへろなのか、いつもに比べてキレもない。
店長の正月休みを胸をたたいて引き受けた(と思われる)ものの、やっぱりこの店は3名でないとうまく回らないようだ。

 

「おぼっちゃまみたい」

 

帰宅するや否や、妻に言われた一言。

プロとはいえ、人間、慌ててしまうと手元も狂ってしまうのだろう。

そんなわけで、我が頭は見事な「坊ちゃん刈り」となったのであった。

 

 

........................テレワークでよかった。□